2023年08月29日

ペンキ塗り


「あゆみカウンセリングルーム」も、開業して21年が過ぎました。自宅を建て増しして相談室を作り、その入り口には看板を作ってもらったのですが、長いこと雨露や風雪に耐えて来ただけに、赤さびが浮き出てくるようになりました。


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「これはさすがにヒドイなあ、電話して塗り直してもらおう」と思いつつ、つい億劫になって時間が経つばかりでした。業者さんに頼むとなれば日程を調整して、待っていなくてはなりません。もう面倒だから自分でやってしまえと、ホームセンターにペンキを買いに行きました。赤さびをワイヤーブラシでこそげ落として……と思っていたのですが、いまは「赤さびの上から塗れます」という塗料があるのですね。赤さびを黒さびに変えてしまうとか。ホンマかいなと思いつつ、楽ちんを決め込んで買ってきました。

その塗料なのですが、油性でうすめ液が要るのはちと抵抗があったし、強粘度のためにハケの毛が抜けて塗面にへばりつくのにも閉口しましたが、結果的にはとても良かったです。赤さびはきれいに塗りつぶすことができたし、粘度のおかげでボタついたりしませんでした。ナニ近くに寄って見なければ、毛がついているのなんか分かりません。こんなに簡単にできるのであれば、もっと早くやっておけば良かったと思いました。出来上がりを、ごらんあれ。


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2023年07月19日

ブライアン・メイのインタビュー

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クイーンのギタリスト、ブライアン・メイ氏も75歳。天体物理学の博士号をもっていて著書もあり、自然保護の熱心な活動家でもあります。私はクイーンが活動していたときはレコードやCDを買うことはなかったのですが、ラジオで聴くことはよくありました。そう言えばフレディ・マーキュリーの映画も、観ましたね。お父さんと自宅の暖炉を加工してギターを作ったとか、たしかピックにはコインを使っているとか、ユニークな人です。サウンドも独特で、細い弦を張って派手なチョーキングをしたり、エフェクターを内臓したようなギターの多重録音をしてシンセサイザーのような音を出してみたり、ギター訓練に明け暮れて速弾きに命をかけるようなタイプとはちょっと違います。

彼がNHKのインタビューを受けていたときの発言には、大いに共感するところがありました。
「インターネットやSNSのために、いまは人が人に厳しくなっている。喜びや愛を分かち合えないのは悲しいことだ。チャットGPTは恐ろしいい。私たちにできるただ一つの対抗は、集って交流することだ」といったことを話していました。まったくその通りだよね、うん、うん……と思うのですが、彼も私も「老人」のポジションになってしまったような感じがして、ちょっと残念な気もしてきました。「まったく、嫌な世の中になったもんだ……」とグチをこぼしているようにも聴こえます。いやいや、彼も素敵な年の重ね方をしている人ですね。見習いたいものです。
posted by nori at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | よしなしごと

2023年06月29日

くつろぐエリック


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黒猫のエリックは、推定年齢が16歳になりました。すっかり貫禄もついて、お爺さん然としております。うっかりして尻尾や足を踏むと、「うにゃ!」と逃げますが、基本的に何をしても怒りません。そもそも踏まれるのだって、人にくっついて歩いてるからなんですが。「エリック〜!」と猫なぜ声で呼ぶと、走ってきます。まあ犬のようなヤツです。

朝の3時、4時になると、ご飯コールが始まります。5時だったら良いのですが、3時は早過ぎる。無視をしても鳴き続けるし、近所迷惑にもなりかねません。黙らせるには、食わせるしかない。夫婦で

「今日も早かったよね」
「夕方にあげるのを、もうちょっと遅くしたら?」
「いやあ、遅くしてもダメだよ。薄明るくなると活動開始だから」

なんて話していると、「なんか、オレのこと話してるな」という表情で聴いています(いるように見えます)。それでも行動を改めるとか、手加減するとかは一切ありません。まあ元気で病気をしないので、ありがたいと思わなくては。わが家は「猫本位制」です。
posted by nori at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | にゃんころじい

2023年05月27日

少子化と地域の安心感

「少子高齢化」が長く続いて、「無子単身化」が続く日本。政権はお金をつぎ込んで子どもを増やそうとしていますが、その効果については、疑問視する意見も多いようです。若い人たちが「家族が増えると楽しい」よりは、「いま生きるだけで精一杯」だったり、「増えない方が心配が少ない」というような世の中になっているのではないでしょうか。

「少子化マインド」は、戦後の復興、高度成長の後遺症ではないかと考えます。戦前の家長制度が廃止されて、「家」のあり方が大きく変わろうとしたときに、その受け皿になったのが「会社」だったように思うのです。しっかりした会社に入れば、衣食住の心配がないだけではなく、家族まで含めた福利厚生がありました。定年退職するときには退職金と厚生年金、あるいは企業年金も用意されていて、老後の心配もない。結婚をしたら家を買って、ローンを返しながら定年を迎えるまで必死に働く。その間、「家族」や「家庭」はないがしろにされていました。家族との暮らしそのものを楽しむよりは、仕事で業績を上げるとか、単身赴任をしてでも昇進を望むとか、個人の達成や組織への貢献が重要視される時代。個人主義とは言いますが、家族で支え合うことを忘れてしまったかのようです。

親戚づきあいや、地域での交流、そして宗教も、「会社」の前では無意味になっていたと思うのです。もっとも宗教に関して言えば、日本の僧侶は宗教家というよりは葬祭業者になってしまっているので、これは江戸時代からの引継ぎです。そしてインターネットとSNS、ゲームの流行による、「対面」と「会話」の激減。そこにコロナが追い打ちをかけました。このごろ何だか、ヘンな事件ばかりが増えていると思いませんか? 安心感が減っていると思うのです。だれがどんなことを考えていて、いきなり何をしだすか分かったものではない、それは怖いことです。地域の中でちょっとした会話があるだけで、ずいぶん違うと思うのですが……。

いま自分がしていることは、散歩などで会った人に、なるべく話しかけることです。今週は川べりでナマズ釣りをしていた人、スケボーで遊んでいた中学生、飼い猫と(!)散歩している人……ちょっとした会話でした。だれかれかまわず話しかける、ヘンなおっさんと思われるかな?
posted by nori at 20:10| Comment(0) | TrackBack(0) | よしなしごと

2023年04月09日

ストレス学説、ポリヴェーガル理論と不登校

ストレス学説は、ハンス・セリエ(1907〜1982)が唱えたのが始まりです。刺激(ストレッサー)が生体にかける負荷が、ストレスです。セリエはストレッサーを、気温や放射線などの物理的ストレッサー、薬物などの化学的ストレッサー、ウィルスやカビなどの生物的ストレッサー、怒りや不安などの心理的ストレッサーに分類しました。この時点では生理学的な反応であって、「ストレスを感じる」かどうかの認知は重要視されていません。セリエは心理学者ではなく、生理学者です。ネズミなどの実験動物でストレス学説を打ち立てました。

1960年代になってホームズとレイがさまざまなライフイベントを点数化して、尺度を作りました。たとえば配偶者の死が100、懲役が63、結婚が50、上司とのトラブルが23といった具合で、こうなると生理学から心理学の世界になっていきます。またストレスが尺度に載るようなライブイベントと、通勤や家事などのデイリーハッスルに分けて語られるようになっていきます。またストレスには「気づいているストレス」と「気づいていないストレス」が「ある」ので、認知が濃厚にからんできます。

また心理学者のラザルス(1922〜2002)が、ストレス・コーピングモデルを提唱します。こうなるともう完全に認知の世界で、ヒトがストレッサーをどう感じるかによって、ストレスの強弱が決まるという話です。たとえばテストを「また点が取れなかったら嫌だなあ」ではなく、「学習の課題を見つける機会だ」と思えば良い、みたいな対処法もアリということです。もちろん、そんな心配をしているヒマがあるんだったら、公式の一つも憶えましょうという対処法もアリです。それが体系化されてストレス・マネジメントとして、企業や学校でも普及してきました。またこういった認知を中心に据えたモデルは、認知行動療法とも馴染みが良いので、便利に使われてきました。

そして1995年にスティーブン・ポージェスが発表した「ポリヴェーガル理論」が、私に言わせればコペルニクス的転回です。ポージェスは副交感神経系には、不動化(死んだふり)を引き起こす背側迷走神経と、コミュケーションを生む腹側迷走神経があるとしました。腹側迷走神経は、進化論的には最後に出てきた哺乳類になってから生まれたもので、コミュニケーションを取ることで身の安全を図っているということです。もう一つの自律神経、闘うか逃げるかを可能にする交感神経、これら三つが反射で切り替わって、私たちは生命維持をしてきたということです。

哺乳類は、ふだんは腹側迷走神経で群れの中で仲良くやっていきます。でもシマウマの群れにライオンが近づくと一瞬で危険信号が広がります。彼らは危険を身体で感じて(ニューロセプション)、交感神経が発動して、それが仲間に伝わります。つまり「ライオンが来たぞ、逃げろ!」と、目で見て音で聴く認知は、絡んでいません。中には背側迷走神経が作動して、倒れて動けなくなくなるシマウマもいるかもしれません。そのままショック死に陥る危険もありますが、ライオンがかみついても動かなければ、助かる可能性があります。肉食動物の多くは、死んだ動物を食べないからです。

私たちが言葉で考えるのは、前頭葉が働いているとされます。これが理性脳だとすると、友好的にコミュニケーションをとる(腹側迷走神経)、闘うか逃げるか(交感神経)、凍りつく(背側迷走神経)を選択するのが進化論的に古い生存脳です。そして生存脳は理性脳より素早く反応します。だから生存脳が働いて「頭では分かっているけど できない or やらかした」とか、後で理性脳が追いついて「こうすれば良かった」ということが出てきます。

ポージェスは神経学者で、「これまでの心理学はあまりにも認知に偏っている」と言っており、ストレスは自律神経系の反応の大きさによって測られるべきだとしています。「ストレスという言葉だって、できたら使いたくない」とも。安心感があると腹側迷走神経が働いて人と関わることができますが、交感神経が働いて興奮・緊張状態にあるときは「ほっ」とする、背側迷走神経が働いて動けない・感じない状態になったときは「まあいいか」になることで、また人と関われるようになっていきます。

「動けない」からの回復は、まず背側迷走神経で不動化することで、自分を守ることが「できた」ことを認識することかもしれません。たとえば不登校になって家でじっと動かない子には、そうやって守ったことを祝福してあげてほしいと思います。そのうえで安心できる環境を用意してあげられれば、「まあいいか」と動き出せるのではないでしょうか。もし再登校したら、交感神経で「闘うか逃げるか」のモードに入っているかもしれません。昇降口から心臓がドキドキしていたり、人目を避けて保健室の出入り口から入ってきたら、もうそうですね。先生方には「ほっ」とするような働きかけをして欲しいです。くれぐれも、さらにプレッシャーをかける声がけをしないように。

ポリヴェーガル理論が実用化された始まりは、自閉症の子どもに加工された特殊な音を聴いてもらうことで、行動を改善するという装置です。その後にトラウマを負った人たちへの支援や心理療法に用いられるようになり、いまでは心理療法の世界にも多大な影響を及ぼしています……アメリカでは。黒船級のインパクトがあるはずなんですが、日本の心理療法業界を席巻するには至っていません。不登校の子どもたちをどう理解するのか、どう関わっていけば良いのか、教職員とスクールカウンセラー、保護者との間でポリヴェーガル理論を共有できれば、頼もしい支援になっていくと考えます。
posted by nori at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 不登校

2023年03月23日

コロナウィルス感染対策について

春分の日も過ぎて、いよいよ春の胎動が感じられるようになりました。新型コロナウィルスの感染防止について、マスクの着用が「自己判断」となりました。でも当相談室では、決して広いとは言えない空間でお話をすることには変わりありません。お互いに安心して過ごすことができるように、これまでと同様の感染対策をとらせていただきますので、ご了承ください(マスクの着用、アルコール消毒、検温、換気)。マスクをお持ちでない方には差し上げますので、どうぞご遠慮なくお申しつけください。