2020年12月23日

トランプ大統領に思うこと

アメリカの大統領選挙も投票人による投票が終わり、バイデンが正式に当選しました。
しかしこの期に至ってもトランプ大統領は「不正」を訴えて、負けを認めていないようです。「アメリカを偉大に」のキャッチフレーズとは裏腹に、世界からの「アメリカ合衆国」への信頼、尊敬、あるいは憧れのようなものを失墜させ続けている張本人ではないでしょうか。

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私はトランプが選挙戦に登場したときから、実に胡散臭い人だと思っていました。精神医学の診断名で言えば「自己愛性人格障害」そのものであって、周囲の人々はすべて、彼の自己愛を満足させる道具でしかありません。共感性が欠落しているので、他人の苦しみには無関心で、およそ政りごとには不向きな人物です。自分が大統領になりたいとは思っていても、大統領になって何をしたいのか、そのビジョンはなかったでしょう。でも明るくて前向きなので、ある意味人を引きつけるキャラクターです。トランプに引きつけられた人々は、トランプに利用されます。自分を理想化してくれたり、自分の手足になってくれる人にはエサを撒くので、お互いに理想化している間はハネムーンが続くでしょう。でも相手が自分の思い通りにならなければ、「どうしようもない奴だ」と価値下げして切り捨てる。いままではそんな、予想通りの展開でした。でも本人が「不正」を確信しているとしたら、妄想を抱いているということであり、きわめて危険な事態です。妄想か否かの判断は、現実に不正があったかどうかは問題ではなくて、訂正不能な思考に陥っているかどうかです。

トランプが大統領に就任してから数か月後に、「ドナルド・トランプの危険な兆候」という本が出版されました。イェール大学の法科大学院でも教えている精神科医のバンディ・リーが呼びかけた会議が発端となり、27名の精神科医や臨床心理学者が執筆して、彼の病理を診断したそうです。公的な人物に対して、診察をせずに診断をくだすことはゴールドウォーターの判例からタブーとなっているアメリカで、あえて出版されました。でも共和党の議員たちにしてみたら、「そんなことは、分かっている」が本音ではないでしょうか。クレイジーではあってもトランプはレーガン以来の共和党のスターであり、彼でなければ政権を取れないことが分かっていたので、持ち上げながら恩恵に預かってきたのでしょう。

私たちが政治家の人柄に期待するものがあるとしたら、常識と良心を持ち合わせているかどうか、ではないかと思います。「常識」も「良心」もインターネットでぐちゃぐちゃになり、突出した個性がアピール力を持つようになった現代では、精神的な健康度を測る視点は必要だと考えます。「ソシオパスだってことが分かったら、トランプには投票しない」とインタビューに答えていたアメリカの若者がいたことに、ほっとした思いがしました。
posted by nori at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | メンタルヘルス