
「ゆるっと画 素朴な民画を楽しむ」の展示会が、奥州市の「えさし郷土文化館」で開かれています。「ゆるっと画」とは芸術的な絵画ではなく、信仰や地域行事などのためにか描かれた絵画、お土産品や護符、陶磁器の絵付けなどの量産画などで、美術館の展覧会などでは見ることができません。「美」を追求したわけでもなく、「術」を凝らしたわけでもなく、「念」そのものを絵にしたような素朴さが特徴です。たとえば狩野派の絵師は手本を徹底的に描写しましたが、神官や僧侶などが地域の人たちに頼まれて描いた絵は、想像したことをそのまま描いていたりします。

たとえばこの絵では、刀鍛冶の神様(荒神さま?)と、鬼と刀鍛冶が力を合わせていたりします。描写がゆるいとかユーモラスというだけではなくて、神と人、生と死、人と動物の境界がゆるい。そういうところにも惹かれました。

ユングが好きな人ならご存じと思いますが、これは「十牛図」の九番目で、悟りの境地に達したところです。悟りとは「自然」だけなのでで、人物は描かれないのですが、ちゃっかり自分を入れちゃっているのが微笑ましいですね。
昨日はそのトークイベントがあり、奥州市地域文化研究所の宮本升平さん、えさし郷土文化館の野坂晃平さんの対談を聴いてきました。お二人のオタクトークが炸裂して、これがまた凄かったです。博識ぶりもさることながら、その熱量にも圧倒される感じでした。