2014年12月27日

里山と野生動物

もうだいぶ前の話ですが、運転しながらラジオを聞いていたら「ジビエ」が話題になっていました。イノシシや鹿など、野生動物の肉の人気が出てきているそうです。本当かな? ただ珍味というだけではなく、野生動物の肉には脂身も少ないだろうし、人工飼料を食べて育つわけでもないので、ヘルシーな印象がありますね。ジビエを売り出す動きには、ハンター(狩猟者)の増加を狙っているという話もありました。

私の故郷は決して大きな街ではありませんでしたが、子どもの頃には猟銃や弾を扱っている店がありました。また鴨を撃ったからと、肉をいただいたこともありました。いま猟をしている人たちの平均年齢は60歳を超えているそうで、またその数も年々減っているそうです。それで生じてくるのが、鹿が樹皮を食べて木が枯れてくるとか、イノシシやサルが農作物を荒らすといった害です。自治体が鹿などの駆除で目標値を定めても、猟をしている人が減ってしまっているので、応えきれないということもあるようです。これまで処分されていた肉を、ジビエとして産業化してお金になるようにすれば、ハンターも増えてくるのではないか、という思惑です。

でもそんなことで、ハンターが増えるのでしょうか? 野山を駆け回って獲物をライフルで撃つ……などというのは、安直な電化生活に慣れきった現代人にとっては相当なことです。「年収1000万は軽いよ」くらいの世界なら、ハンターを目指す若者も出てくるでしょうが、そんな感じではないでしょうしね。それにお金になるクマやイノシシはいざ知らず、もともと「鹿」はハンターの獲物になっていたのかどうか疑わしいです。私も何度か鹿の肉をいただいたことがありますが、豚肉や牛肉と同じ感覚で調理してしまうと、臭いばかりで美味しくないです。「ハンターが減ったから鹿が増えた」とは、言えないような気がします。

日本の森や里山を守るためには、外国からハイイロオオオカミを連れてきて放てば良いと主張している人たちもいるようです。鹿が増えたのはニホンオオカミが絶滅したからだと言うのですが、どうも変ですね。ニホンオオカミが絶滅したのは、すでに100年も前の話です。オオカミが人を襲うことはきわめて稀で、日本では狂犬病の心配もないと言うのですが……。そのオオカミが家畜を襲う可能性は、ないのでしょうか。それにいくら「大丈夫」と学者や役人が言ったところで、山にオオカミが放たれてしまったら、近くの里に住みたい人はますます減ってしまうでしょう。小さな子どもがいる家庭は、逃げ出したくなるのがふつうのような気がします。それに「人や家畜を襲わないで鹿だけ適当に食べてくれ」と、環境の異なる日本まで連れてこられるのはオオカミにとっても迷惑な話でしょう。

「里で野生動物の害が増えている」とは言いますが、見方を変えれば里から人が減ってしまって、野生動物のテリトリーになっているということです。野生動物を山にとどめたいのであれば、里に人を増やすことですが、これはよほどのことがないと難しい。せめて動物たちが山に住めるように、杉やヒノキなどの人工針葉樹林を伐採して自然林に戻していくことが対策になるのかもしれません。

まず私たちにできることは、何でしょうか。日本の野菜や果物、肉や乳製品などを食べて農業を守ること。国産の材木や間伐材を積極的に使うこと。悲しいですが、そのくらいしか思いつきません。
posted by nori at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | よしなしごと
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