
数年前にレコードショップで中古盤を手に入れて以来、お正月になると引っ張りだしてきてはカウンセリングルームのレコードプレイヤーに載せています。もちろん自宅にもオーディオ装置はあって、音はそちらの方が良いのですが、家人に迷惑をかけずに(邪魔をされずに)ゆったりと、10枚組のLPを聴くのが私の恒例になっています。
キース・ジャレットが1976年に日本でソロピアノのコンサートツァーを行ったのですが、その時のライブ録音です。キースが北海道で「ヒグマ」の直訳英語の「サンベア」を聞いて面白がり、タイトルにしたそうです。録音は名エンジニアとしても、オーディオ評論家としても高名な菅野沖彦氏。今はCDの6枚組になっているようですが、当時はLPの10枚組でお値段は1万5千円、聴いてはみたいもののそのボリュームと出費に腰が退けていました。
キース・ジャレットのソロピアノは特定の曲を演奏するのではなくて、全く無のところから音を紡いでいきます。「ケルン・コンサート」はCMに使われていたこともあって、耳にした人も多いと思います。これは相当な集中力を必要とするわけで、最近では大阪で聴衆のセキ?と野次にガックリ来たキースが、アンコールなしでそそくさと止めてしまったというエピソードがありました。
ピアノを弾き続けたキース・ジャレット、録音した菅野沖彦、ECMのプロデューサーのマンフレット・アイヒャーを始め、スタッフや聴衆も含めると、実に多くの人たちがこの作品に没頭していたのだと思います。カウンセラーとして仕事をしてゆくことも、集中力や持久力を求められます。このアルバムは、自分の営みと重ねて聴いているのかもしれません。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。