朝日新聞デジタルに、「傲慢トップは経営リスクか 『人格障害』ビジネス界注目」との記事がありました。ちょっと長くなりますが、引用します。
トップが暴走して会社が存亡のふちに――。そこまでいかなくても「傲慢(ごうまん)」経営者に悩む人たちは多い。英国では、傲慢を「人格障害の一種」ととらえ、対策を考える研究が始まっている。ビジネス界も、「傲慢」は経営リスクと見て、注目している。
トップが助言に耳を傾けず、冷静な判断ができなくなって経営につまずく。これを「傲慢症候群」と名づけ、提唱しているのは神経科医の経歴をもつ、英政治家のデービッド・オーエン元外相・厚生相(76)だ。病気ではないが「権力の座に長くいると性格が変わる人格障害の一種といえる」という。
オーエン氏が代表格となっている研究会は「傲慢学会」とも呼ばれている。2012年から英国で開いている国際会議を中心に活動。昨年は欧米の脳外科医、生化学者、精神分析医、経営・組織学などの専門家ら、約300人が集まった。
「傲慢」に関心が集まっている背景には、ここ数年の経済危機や不況で、失態ぶりをさらけだした政府や企業への厳しい視線がある。リーマン・ショックでは、利益を追求し続け、巨額の損失をもたらした経営者らが激しい批判にさらされた。判断ミスを犯してきた理由は、冷静な判断を妨げる自信過剰があったという研究も増えている。
長く権力の座にあると、自信過剰になり、周囲が見えなくなる。ニューヨークで、乗務員のサービスに激怒して飛行機をひきかえさせた「ナッツ騒動」も、「傲慢」の代表例だ。
オーエン氏は、「傲慢症候群の14の症例」を示している。対策として「暴走しはじめた本人に目を覚まさせる側近をつける。精神カウンセリングをうける努力をしてもらい、手がつけられない場合は辞めてもらうべきだ」と話す。
「14の症例」は「チェックリスト」とではないかと思いますが、以下のようなものです。
@自己陶酔の傾向があり、「この世は基本的に権力をふるって栄達をめざす劇場だ」と思うことがある
A何かするときは、まずは自分がよく映るようにしたい
Bイメージや外見がかなり気になる
C偉大な指導者のような態度をとることがある。話しているうちに気がたかぶり、我を失うこともある
D自分のことを「国」や「組織」と重ねあわせるようになり、考えや利害もおなじだと思ってしまう
E自分のことを王様のように「わたしたち」と気取って言ったり、自分を大きく見せるため「彼は」「彼女は」などと三人称をつかったりする
F自分の判断には大きすぎる自信があるが、ほかの人の助言や批判は見下すことがある
G自分の能力を過信する。「私には無限に近い力があるのではないか」とも思う
H「私の可否を問うのは、同僚や世論などのありふれたものではない。審判するのは歴史か神だ」と思う
I「いずれ私の正しさは歴史か神が判断してくれる」と信じている
J現実感覚を失い、ひきこもりがちになることがある
Kせわしなく、むこうみずで衝動的
L大きなビジョンに気をとられがち。「私がやろうとしていることは道義的に正しいので、実用性やコスト、結果についてさほど検討する必要はない」と思うことがある
M政策や計画を進めるとき、基本動作をないがしろにしたり、詳細に注意を払わなかったりするので、ミスや失敗を招いてしまう
傲慢症候群は、精神分析でいう「自己愛人格障害」と似ているようです。自己愛人格障害の特徴は共感性の欠如で、他人をモノのように扱っても何の痛痒も感じません。成田善弘先生の言葉を借りれば、「自分が自分であるというだけで、特別扱いされてしかるべきと考える」、まことに鼻持ちならないパーソナリティです。よほど才能に恵まれるかどこかの御曹司か、死にものぐるいで働くような人であれば、一代で企業を築き上げるようなこともあるでしょう。「傲慢症候群」はもともとは普通の人でも、立場によって人格変化を起こすことが想定されているようですが、その何割かは自己愛人格障害の人も含まれると思います。
企業のリスクとして注目されている傲慢症候群ですが、経済界だけの問題ではありません。政界も……国会の議員会館の中に入ったことがありますが、「特別な人たち」を「特別扱い」する仕組みを見て、こういうところに出入りしているうちに人柄が変わっても無理はないと思いました。学会にも「天皇」とアダ名されるような人がいます。むろん私たちの業界にも、人の話を聴けない人がいます。「そんなことは、自分に関係ない」と思ってしまうような人が、いちばん危ないのかもしれません。
2015年03月18日
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