2017年05月26日

スクールソーシャルワーカー

ここ何年かで、スクールソーシャルワーカーが学校に配置されるようになってきました。全国的なことは分かりませんが、私が住んでいる岩手県ではその質、量ともに向上しています。「質」については社会福祉士の資格をもって、福祉の領域で仕事をしていた人たちが配置されるようになりました。導入期には、必ずしもそうではない実態もありました。アメリカでは不就学児童への対策で20世紀初頭からの歴史がある学校ソーシャルワークですが、日本では今が黎明期ということになります。

どこからか「スクールカウンセラーには、スクールソーシャルワーカーのスーパービジョンをして欲しい」という声が聞こえてきたこともありました。おそらくは「どう動いて良いか分からない人たちに、動き方を教えてやって欲しい」というくらいの意味で、そう言いたくなる気持ちも分からないではありません。でも本来の概念からすれば、スクールカウンセラーはスクールソーシャルワーカーにとって、病院や児童相談所や適応指導教室など、色々な社会資源の一つです。せいぜい信頼して使ってもらえるように頑張るのが、関の山ということになります。

非常勤講師をしている大学院で、教授がカウンセリングとケースワークの違いについて、「よく使われるたとえ話が、うまく泳げない人に浮き輪を投げてあげるのがケースワークで、うまく泳げるように手助けするのがカウンセリング」と説明していました。このたとえ話は援助が直接的どうか、また必要性や緊急性によってそれを使い分けることを説明するにはよくできていると思います。足がつっているような人には浮き輪が必要だし、もうちょっとで泳げる人には浮き輪はかえって害になるでしょう。ただ「両方が必要な人」がもれてしまうのが、惜しいと思います。

スクールカウンセラーとして仕事をしていて、どうしてもケースワークが必要な生徒が出てきます。いまだったらスクールソーシャルワーカーさんにお願いするケースでも、以前は自分で関係機関に連絡をしたりして、ケースワークの真似事をすることもありました。若い頃に働いていた精神科の病院では、ソーシャルワーカーさんたちとのつきあいが濃厚だったので、「門前の小僧」なのです。ちなみに「習わぬ経」は「使えるものは何でも使う」と「思い立ったらすぐ電話」で、まことに頼りがいがあるというか先方も大変だろうなあというか、ケースワークとはその種の行為だと思っていました。

スクールソーシャルワーカーよりも歴史がちょっぴり長いスクールカウンセラーも、まだ専門職としての役割が不明確なところもあると思います。これから一緒に仕事をしていく中で、それぞれのアイデンティティを作りながら連携していければ良いと考えています。
この記事へのコメント
この記事のコメントというわけではないのですが…
このブログを見つけてから、いつも深くうなづきながら、愉しく拝読させていただいています。
私は障がい者の福祉事業所ではたらいています(まぁ、ソーシャルワーカーの端くれですね)が、障がいを持つ仲間たちの心の問題に悩む毎日です。市の発達相談支援センターの方に時々来ていただき、ケースの相談をしていますが、激務の合間に来ていただくので、なかなか思うように時間が取れません。個人情報の問題もあるのでケースの相談というわけにはいきませんが、こんなとき支援員としてどんな視点をもち、どんな心構えで向き合っていくといいのか、というような相談ができないかな、とかねがね思っております。アドバイスがあったらお願いします。
Posted by かぶぅ at 2017年08月20日 15:56
お読みいただいて、ありがとうございます。そうですね、アドバイスになるかどうか……。「端くれ」とおっしゃるところからは、まだお若い方かもしれませんね。

対人援助職は、「役に立つ」ことが一番だと思います。どうすることが相手の役に立つか、ということですね。役に立つような役割をとっているうちに、「視点」や「心構え」はついてくるというか、気にならなくなります。10年もしがみついていれば、自分にできることもできないことも分かってきて、落ち着きが出てくると思います。

私たちの仕事は成長したかどうか分かりにくいのですが、年数を重ねれば「端くれ」から「中堅」、そして「ベテラン」に否応なく格上げされます。そのときには適切にケースを理解したり、介入をしたり、そして自分の言葉で語れるようになっていたいものです。それは自分一人で考えていても限界があって、関わっているケースの理解と介入について話し合うことがトレーニングになります。スーパービジョンを受けられれば良いのですが、必ずしもそうした環境にない人も多いですから、身近な同僚や同業者とする、ということでしょうか。

あれこれ書きましたが、何でも思っていることを話してみましょうということです。個人情報については「あなたのことを、市のセンターの○○さんと相談して進めていきたいんだけど」とでも了解をとれば、クリアできそうに思います。

状況を把握していないので、的外れになってしまっていたらごめんなさい。ご不明の点があったら、おたずねください。
Posted by nori at 2017年08月24日 23:23
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/179859625
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック