とある、山間地の中学校でのこと。1年生の体育の授業では、マット運動をやっていました。仕上げの時間ということで、生徒たちはグループ内で「発表」をして、評価してもらっていました。これが私にとっては衝撃的で、色々と考えさせられてしまいました。前転をすると足がびろ〜んと開く子が多数おり、後転にいたっては半分くらいしかできません。恥ずかしさもあるのかもしれないけど、演技の終わりにしっかり止まることのできない子ばかりです。私はお世辞にも運動神経が良かったわけではなく、体育は苦手でしたが、でも後転は小学校の4年生くらいでやっていたように思います。次の週は、走り高跳びでした。「はさみ飛び」ができない子が、いっぱいです。跳び箱の閉脚飛びみたいにやる子、ジャンプできないままゴムひもにつっこむ子、変にのけぞって背面飛びになる子……。
その学校の体育の先生も、「今年の1年生は不器用な子が多くて……」と困っているようでした。山間地であるがゆえ、ちょっと外に出て友だちと遊ぶということもなさそうです。なんでも「猿が出て怖いから、うっかり子どもを外に出せない」という保護者もいるそうです。「クマを見た人、いる?」と聞くと、こっちでもあっちでも手を挙げる子がいるようなところです。もちろんクマも怖いし、猿も怖い。鹿だって角を突き立てて向かってきたら、人間なんかひとたまりもありません。こうした野生動物の脅威に加えて、ゲーム三昧で外に出ない子たちがごっそりと中学校に入ってくるというわけです。彼らの動き方を見ていると、とても身体のすみずみまで神経が行きわたっているように思えないほどです。
「昔は良かった」とか「近頃の若い者は」みたいな話は、メソポタミアの碑文にもあるそうです。だからあんまり言いたくはないことだけど、いまの時代の子育てや教育、とくに体育は見た目ばかりを大事にして根本をおろそかにしているような気がしてなりません。用水路で魚をとったり、神社の境内で缶けりをしたり、空き地で三角ベースをしたり、というのが私の子ども時代の遊びでした。家にいても家業の手伝いをしたり、おつかいに行くとかで、身体を動かす機会がたくさんありました。お稽古事や競技スポーツよりも、ただ歩いたり走ったり、自然の中で遊んだり、家事をする方が本当の体育ではないかと思います。
2017年07月20日
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