その後はもうそれなりと言うか、「落語」や「津軽三味線」のような位置づけでしょうか。いまや黄金期のミュージシャンはあらかたあの世に行ってしまい、型破りなスタイルや新人が出てくるわけでもありません。「今年はあの人が死んだなあ」なんて思い出して、追悼にレコードをかけるのが一年の総括だったりします。寂しいとも言えるし、良い時代に青年期を過ごしたとも言えます。
今年はギタリストで言えば、ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie 1944〜2017)が亡くなりました。彼のベースにあるのはロックで、ウネウネとくねったりガチョーンと跳んだりで、フォービートのスタンダードを演るような人ではありません。でもアドリブの妙味と言うことでは、聴きごたえのあるギタリストでした。エレクトリック・マンドリンやギター・シンセサイザーも、完全に自分のものにしていました。ほとんどの録音は、ECMからリリースされています。

ECMと言えばリッチー・バイラーク(p)が失恋したアバークロンビーを励まそうと熱くプレイしたら、プロデューサーのマンフレット・アイヒャーが「ECMにアート・ブレイキーは要らない!」とカンカンになったとか。バイラークが「たまには俺たちの好きにやらせてくれたって良いじゃないか」と言ったら、出入り禁止になって旧譜もカタログから消えてしまったそうです。アバークロンビーはそんな憂き目に遭わなかったので、口答えしなかったんでしょうか。因縁の? リッチー・バイラークと組んだ「Abercrombie Quartet」(ECM 1977年)のアナログレコードを聴きながら書いています。
