主人公は、ボストンで便利屋をしています。基本的には「良い人」なのですが、偏屈で、人とのつきあいを良しとせず、衝動的なところもあります。楽しそうに生きている感じでは、ありません。何かとてつもなく重いものを、抱えているんだろうと思わせます。そして実際に、抱えていたのです。故郷の兄が亡くなって、甥っ子の後見人に指名されていたことから、それが露わになってきます。いわゆるネタバレになってしまうので、書けないのですが……。

マサチューセッツ州の「マンチェスター」は人口5千人あまりで、この映画の題名どおり海辺にあって風光明媚な町です。主人公にとっては、故郷の懐かしい人たちも、子どもの頃からなじんでいた景色も、傷をえぐるような痛みしか与えてくれません。劇的な癒しや救いがあるわけではなく、救いようのない重苦しさが淡々と描かれています。人の強さ、こそが希望なのでしょうか。