2018年05月23日

ジム・ホール

ジム・ホール(Jim Hall 1930〜2013)は、1955年にチコ・ハミルトンのグループでデビューしました。あの複雑精妙なアレンジにヤラれたのか、若い頃からすっかりオツムが薄くなってしまいました。そんなことをつい思ってしまうほど、周りへの心配りが行き届いたギターを弾いた人です。あっと驚くようなテクニックでオレがオレがと弾きまくるようなタイプじゃなくて、サイドマンで良い録音を残すようなタイプと言ったら良いのでしょうか。ジムなんだけど事務的には弾かなかった、なんてね。

jimhall.png

彼のギターは、まずシングルトーンの力が凄いです。丸くて太いけど、ギターらしいナマの鳴りも聴こえて、そしてクリーンです。多くのギタリストに影響を与えた、独創的なフレーズも印象に残ります。エラ・フィッツジェラルド(vo)、ポール・デスモンド(as)、アート・ファーマー(tp)、ビル・エバンス(p)、ソニー・ロリンズ(ts)、ミシェル・ペトルチアーニ(p)、チャーリー・ヘイデン(b)と、さまざまなプレイヤーに呼ばれています。

中には主役を食っているような録音もあって、その一枚に挙げられるのがソニー・ロリンズとの「橋」です。おクスリで雲隠れしたロリンズが、橋のたもとで練習に励んで復帰したレコーディングで、ジム・ホールは何とも味のある演奏をしています。ロリンズはピアノのコードに縛られるのを嫌っていたのか、ベースとドラムスだけを従えて「ウェイ・アウト・ウェスト」などの名盤を残しています。「橋」はその延長線上にあって、テナー・サックス、ベース、ドラムスのトリオに、ジム・ホールのギターがからむようなスリリングな演奏です。彼はインタビューで「ソニー・ロリンズは演奏に注文をつけないで、すぐクビにする」と語っていましたが、そんなことを気にして弾いていたんでしょうか。

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リーダー作で決定的名盤はないのかもしれないけど、サイドマンでピカいちの仕事をして、作曲家としても評価が高くて、沢山のミュージシャンに影響を与えた、奥の深いギタリストと言えるでしょう。
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