
チャーリー・クリスチャンは単音でソロをとってモダン・ジャズのギター奏法の開祖になりましたが、ギターという楽器は管楽器に比べるとどうしても音が細くなってしまいます。でも1弦と3弦、2弦と4弦を使って1オクターブ差の同音を弾いてソロを弾くと、あーら不思議、何とも言えずファットな味わいになります。もちろん音を出したくない弦は、ミュートします。原理は簡単なんだけど、これをノリノリで弾きまくるには相当な修練が必要です。面白いのは、ウェスが「もっとファットな音が欲しい!」と考えて始めたのではなくて、子どもたちが寝静まった夜に練習するために、ピックを使わないで指で弾いていたのがきっかけになったそうです。どこまでも、子ども思いだったんですね。そしてウェスはソロだけじゃなくて、コードワークも素晴らしいものがあります。写真を見ると異様に手がデカくて親指も強力そうで、あのファンキーな演奏には体格が寄与していたのではないかと思います。
オクターブ奏法をするには、もちろん練習も必要だけれど、度胸も必要なようです。ウェスの印象があまりにも強いために、「なんだ、ウェスの真似じゃん」で終わってしまいそうな感じがつきまとうのです。どうせやるなら、ウェス以上にカッコよくやらないと、意味がないような。リー・リトナーはウェスの影響でジャズ・ギターの世界に入った人で、オクターブ奏法も披露しますが、ハードバップと言うよりはウェスの晩年のイージー・リスニング路線の発展形という感じです。「俺は日本のウェスだ!」の宮之上貴昭さんくらいにならないと、ハードルが高いかもしれません。(The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery / Riverside 1960)
