岩手県はジャズが盛んです。一関市のジャズ喫茶「ベイシー」は全国的にも有名ですが、盛岡市には「ダンテ」、「S」、「すぺいん倶楽部」、「ノンク・トンク」、「ジョニー」、奥州市には「レイ・ブラウン」「ハーフ・ノート」、釜石市には「タウンホール」、陸前高田市には「ジャズタイムジョニー」など、ジャズスポットが頑張っています。最近になって宮古市に「ハーヴェスト・ムーン」も開店しました。年に一度、「いわてJAZZ」も盛岡市の県民会館で開催されています。アマチュアミュージシャンのレベルも高くて、お店で聴くとしっかりチャージを取られます。
ベイシーよりもちょっと早く1964年に開店したのが、三陸沿岸は大槌町(釜石市の北隣)の「クイーン」です。私が住んでいる町からは遠いこともあって、お店に顔を出せるのは年に一度、とある官公庁の仕事で宮古市と釜石市に行くときでした。移動時間を含んでのダブルヘッダーだったので、お休みを兼ねて寄らせてもらっていました。それでもマスターは憶えてくれていて、ジャズにとどまらず色々な話を聞かせてくれました。スピーカーの周りにはあふれんばかりの本やCDが積みあがっていて、スピーカーの見えないジャズ喫茶というのも珍しくて、私にはジャズ談義喫茶、みたいな感じでした。
ところが震災でお店が流されてしまい、マスターの佐々木賢一さんと長女の多恵子さんは内陸で暮らすようになりました。それからのおつき合いは濃いものになりましたが、残念なことに昨年の夏にマスターが急逝されました。喫茶店は休んじゃいけない――「店を休んでデートがダメになったらどう責任をとるんだ?」とか、人気のデートスポットだったかどうかはさて置いて、そんな使命感もあって年中無休でやっていたマスターのことなので、さぞお店を再開したかったことでしょう。でも現実は厳しくて、延び延びになっていました。このほど、多恵子さんが「クイン」として大槌駅前にオープンする運びになりました。
そう言えば店名がありがちなジャズの曲でもミュージシャンでもなく、なぜ「クイーン」「クイン」だったのかは、マスターは教えてくれませんでした。無類の映画好きだったので「アンソニー・クインから?」と聞いたこともあったけど、そうでもなかったようです。多恵子さんの決心と行動力に敬意を表するとともに、「クイン」が客足の絶えないお店になることを願っています。
2019年12月16日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186926338
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186926338
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック