大好きなピアニスト、キース・ジャレットが2018年に2回の脳卒中を起こして、左半身にまひが残っているそうです。いまは杖をついて歩いているけど、ここまでくるのに1年以上を要したとか。「左手の機能で回復で望めるのは、コップを握ることくらい」で、「自分がピアニストには感じられない」とインタビューで語ったそうです。
私がジャズを聴き始めた学生時代、ピアニストで言えばキース・ジャレットやチック・コリア、ハービー・ハンコックは若手の旗頭という感じでした。とくにピアノ一台を前にして、思いのままに即興で弾くコンサートは前人未踏の境地を切り開いていたと言えます。「うなり声がうるさい」と嫌うリスナーもいたし、オスカー・ピーターソンにはこき下ろされるし、自らはウィントン・マルサリスの演奏を批判したりで、色々と物議をかもす人ではありました。でも三人の中では、コマーシャリズムに流れないで純粋に音楽を追求していたのはキースでした。そのキースもいまや75歳で、脳梗塞に苦しんでいるとは、自分だって歳をとってるんだなあと感じざるを得ません。そして大酒飲みで有名だったハンコックよりも先にダウンしてしまうとは、人生分からないものです。
ちょっと気になっているのが、病気の発症から2年も経って公表していることです。もしかしたら、うつ状態になっていたのではないでしょうか。やっと自分の障害を受け容れることができるようになって、公表したのかもしれません。私としては、ピアニストであることから解放されて、作曲をしてくれないかなと思っています。キースはジャズはもちろん、バッハやヘンデル、ショスタコービチなどのクラシック作品でも素晴らしい演奏を残しています。オーケストラの曲も書いているのですが、キースだったらもっと圧倒的な作品を書けるように感じていました。音楽活動をする意欲はなかなか湧いてこないかもしれないし、仕事をしなくても十分に暮らしていけるのでしょうけど、音楽家に生まれついたような人なので、ひそかに期待しています。
キースのソロ・コンサートは一度だけ、新潟市で聴いたことがあります。本当に美しい時間で、終わってから立ち上がるまで時間がかかりました。そして何十枚かある、LPレコードとCD。今まで沢山の音楽体験をさせてもらいました。安らぎと生きがいのある余生であることを、願っています。
2020年11月05日
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