2022年04月11日

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

主人公の肇(中井貴一)は大会社の企画室室長で、役員への道も確実になってきていました。仕事に追われて家族のことは二の次、三の次、仕事のことしか目に入って入っておらず、いつもイライラしています。そんなときに、自分のために工場を閉鎖するのに尽力してくれた親友が交通事故で亡くなり、島根で一人暮らししていた母親が病気で倒れます。子どものころから「バタ電」の運転士になりたかったーーそんな夢を思い出して、一念発起、電車の運転士になって地元で生活する道を選びました。

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表のストーリーとしては、「オレ、何をやってるんだろう」から「夢の実現」をなしとげた、そういう話です。中年期の危機と言ってもよいかもしれません。でもそれはあくまでも「表」で、「裏」が透けて見えてくるのが、この映画の魅力ではないかと思います。

その「裏」とは、中年を過ぎて感じるようになる、加害者意識でしょうか。仕事にかまけて、娘や妻、母親に淋しい思いをさせてきました。機嫌の悪いのをまき散らしていたし。会社の指示とは言え、工場をたたんでリストラを断行しました。仕方のないことだったかもしれませんが、物づくりにかけてきた社員たちへの共感はありませんでした。そして親友が店を予約してくれていたのに、東京にトンボ返りして、飲みに行きませんでした。もし誘いを断らなかったらゆっくり話もできたし、もしかしたら事故にも遭わなくて済んだのかもしれない。

そんな加害者意識、そして贖罪の気持ちが生まれていても、不思議ではないと思うような展開でした。同期で入社した運転士、宮田(三浦貴大)に「エリート」という言葉を使われたとき、肇は「オレはエリートなんかじゃない。自分のことしか考えない人間が、エリートのわけがない」と返していましたが、肇はエリートの意味を分かっていたはずなのに、いつの間にかずれていたことに、気づいたのでしょう。乗客にも宮田にも、家族にも優しく接するようになっていました。大会社の重役候補のときはエリートではなかったけど、運転士になってからエリートになった、そんな成長の物語だと感じました。
posted by nori at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画に見るこころ
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