
フロム・ライヒマンでよく引き合いに出されるのが「統合失調症を作る母親」と言う概念で、現在では否定的に語られていますが、英国の対象関係論と同じように環境としての母親の機能を重視していたことがうかがわれます。また精神病者も神経症者も、いわゆる健常者も、病理の量的な差があるだけで質的な差はないとも言っており、やはり対象関係論のスキゾイド概念と近いものがあります。
原著は1950年の出版ですから、半世紀以上の時を経て、なお読み継がれていることになります。邦題ではintensiveが「積極的」と訳されていますが、一般的には「探索的」ですね。薬物療法がない時代の心理療法の実践記録としても、貴重なものです。治療関係をどのように作り、役立てていくのか、私にとっては良い教科書でした。
(フリーダ・フロム・ライヒマン著、阪本健二訳、誠信書房)