今や「心理学」はおろか、「臨床心理学」もその全体を俯瞰した上で考察を述べるのは難しくなってきました。ほとんどの教科書が一人の著者によらず、編集ものになっているのが、その何よりの証拠と言えるかもしれません。それそれだからこそ、一人の著者による論述は光を増していきます。
本書は Sheldon J. Korchin(1921〜1989)による、Modern Clinical Psychology (Basic Books,Inc.,New York,1976)の全訳です。1980年に出版されたこの本は絶版になっていますが、古書では手に入るので、臨床心理学を学ぼうとする方にはぜひ目を通していただきたいテキストです。本文だけで800ページにわたりますが、著者が公平に、原点に立ち戻って、さまざまな理論やアセスメントと介入の技法について論じています。と言って四角四面ではなく、ユーモアも感じさせてくれます。
少し長くなりますが、訳書に寄せられた著者のメッセージの一部を引用します。
私はあなた方、日本の同学の方々が日本人の生活と人生の現実に照らして、本書に示された概念の価値を検討されるよう願っている。合衆国に生まれ育った考え方である、心理力動的な心理療法、臨床的アセスメント、行動療法、あるいは地域社会介入といった諸概念が、日本の患者を援助する上で、どの程度、またどんな形で役立つであろうか? 森田とか内観療法は、上記の概念的な述語を用いて理解できるものであろうか、それとも別個の独自な理論が必要であろうか? とりわけ、日本人のクライエントにとって一番助けになりそうなのは、どのような介入であろうか? 遙か海のかなたから、私は大きな関心と興味をもって見守りたいと思う。しかしこれらの疑問に対して答えを出すのは、あくまでもあなた方である。
そう言われると、耳が痛くなる人も多いのではないでしょうか。私だって、もちろん痛いです。コーチン先生は今や海のかなたではなく、天上からポーカーでもしながら(クラブに入っていたようです)見守っているでしょうが、「まだまだだねー」と苦笑いしているかもしれません。
(S.J.コーチン著、村瀬孝監訳、弘文堂)
2009年04月11日
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