「臨床心理士になるには……」と一生懸命に情報を集めて、あれこれ考えて、大学院に進んで……という人たちが、大勢います。ある大学の教授が、「臨床心理士の資格ができてから、どうしたら臨床心理士になれるかって言う話ばっかりで、どうしたら良い臨床心理士になれるかと言う話はさっぱり聞かなくなった」と言っていました。たしかに全く、その通りです。
「昔は良かった」みたいな話はしたくないのですが、私たちのように資格など影も形もない時代に育った世代は、「良い」臨床心理士になるしか生き残る道がなかったわけです。なるのは簡単、続けるのは難しい、と言う認識もありました。ところが今は「なる」ことがゴールのようになってしまっています。もっとも指定大学院に入るのがけっこう難しいと言う話も聞くので、それはそれで致し方ない面もあるのでしょう。
では「良い臨床心理士」とはどのような人を言うのか、これもまた難しい問題です。それぞれが、一生をかけて追求する課題かもしれません。さしあたり心理的な困難を抱えている人の役に立てること(少なくとも害にならないこと)、そしてそれが臨床心理学の独自性と専門性に基づいていること、その援助のプロセスを説明できること、と言うことになるのでしょうか。実際にやろうとなると簡単なことではないでしょうし、この道で一人前みたいな感覚が育って来るには仕事に就いてから10年くらいはかかると思います。
今の若い人たちは、なまじ資格があるだけに、すぐに「何ができるの?」と問われることになります。昔のように心理士が何をする人なのか雇っている方もよく分からないとか、初めのうちはむだ飯を食わせておいても良いとか、牧歌的な環境がないのは気の毒な感じもします。やっぱり「昔は良かった」みたいな話になってしまって、ごめんなさいです。
2009年10月04日
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