また聞きのような情報ですが、最近になってアメリカ心理学会が、「性的な指向を変えようとする介入は、するべきでない」との見解を出したそうです。アメリカでは同性愛が市民権をすっかり得ているような印象もあるので、意外に思われるかもしれません。宗教的な理由で同性愛の治療を受けて「直したい」と考える人たちも、少なからずいるそうです。でもその治療成績は効果を上げるよりも、失敗に終わる方が多いらしいのです。
私が20代の時に出版された精神医学のテキストでは、たしか同性愛が「性的異常」のひとつとして挙げられていたと記憶しています。「異常者」のラベルを貼られたくないのなら、ひた隠しにして生きるしかない時代でした。同性愛とは病理であって、「治療すべき対象」だったとも言えます。それが時代が進むにつれて「本人が困っているのなら、治療の対象になる」になり、「治療を受けたいと言われても、やらない方が良い」に変わってきました。
精神分析的な心理療法を学んでいた時に、スーパーバイザーの先生が「日本のように同性愛者が同性愛者として生きられない社会だと、神経症になる人が多いのではないかな」と言っていました。
今の日本で同性愛は、「ひた隠しにする」ことではないかもしれません。芸能人ではカミングアウトをして、むしろそれで売れる人もいるようです。性同一性障害についての理解が進んできて、ジェンダーについても語られるようになってきました。「男として生まれたら女を、女として生まれたら男を愛すのが当たり前」という固定観念は揺らぎつつあるようです。かと言って街中やショッピングセンターで同性のカップルが手をつないで歩く姿を、私はまだ見たことがありません。同性愛者が同性愛者として生きられる社会、ではないようです。
2010年02月11日
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