2010年05月19日

部品がない!

 企業におもむいて、社員の方のカウンセリングをすることがあります。話を聴いていると日本の工業の構造的な問題、というと大げさかもしれませんが、そんな現実をかいま見ることがあります。

 部品の調達を担当していると、大変なストレスを抱えることがあるようです。ベンダー(納入業者)から、「この部品は、もう生産を止めたい」と言われてしまうと、困ってしまうのです。会社は得意先に納品する約束をしているので、契約違反をすると損害賠償を求められることになります。それが何千万単位、億単位のお金だったら……。

 調達の担当者は「そう言わずに、もう少し待ってくださいよ」と頼むし、ベンダーにしてもそう言われるとむげには断れません。でも採算割れのまま何年も経ったり、こつこつ手作りしていた職人が退職したりすると、「もう、本当に勘弁してください」となります。

 熟練した職人の技術を、簡単に伝えていくことはできません。伝統産業の後継者が育たないのは、人間国宝級の作品は売れるけれども、若い人の修行になるような仕事がなくなってしまったからだ、と聞いたことがあります。法隆寺の修復を手がけた西岡常一棟梁は、宮大工の仕事がない時には鍋のふたを削っていたこともあったそうです。でも今や鍋のふたなど職人さんに削ってもらうことなどなく、ホームセンターで安く買ってしまいます。機械化、ロボット化が進んだ製造現場でも、同じようなことが起きているのかもしれません。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/38312217
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック