
精神分析を学んでみたいけど、何から読んだらよいのか見当がつかないという人は、案外多いのではないでしょうか。フロイトの「精神分析入門」から読み始める方もいらっしゃるでしょうが(私もそうでした)、これは全く入門書ではなくて読みづらいものです。フロイトを無視するわけにはいかないけれど、フロイトから読み始めるとえらい目に遭います。
「精神分析セミナー」は小此木先生をはじめとする、慶応の先生方が講義をされた記録です。5巻にわたっているので、それなりのボリュームはありますが、話し言葉で記されているので読みやすいです。惜しむらくは出版から30年を経ていることもあって、古めかしい印象は否めません。また当然かもしれませんが、理論的には自我心理学によっています。対象関係論や自己心理学は、ほとんど触れられていません。
岩崎学術出版社は心理療法、とくに精神分析に関する書籍を多数出版していますが、「品切れ」や「絶版」が非常に少ないところです。「岩崎の本は高い」と言う人もいますが、私は高いとは思いません。在庫を抱えておくコストというものは、ばかにならないものです。初版でお終いになってしまって、欲しい本が手に入らないことも多い昨今ですが、30年前の本が新品ですぐ手に入るのは驚くべきことです。今日は文化の日ですが、彼らこそ勲章ものだと思うのです。
精神分析セミナー T精神療法の基礎/U精神分析の治療機序/Vフロイトの治療技法論/Wフロイトの精神病理学理論/X発達とライフスタイルの観点 (岩崎学術出版社)