2010年11月16日

給食の音

 キース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンとのデュオ「ジャスミン」が、最近のお気に入りです。慢性疲労症候群からの回復中に録音したとかで、しみじみと沁みる演奏ですが、自筆のライナー・ノートに「良い装置で聴いて欲しい」との一節がありました。こんな注文をミュージシャンがつけたくなるほど、今のオーディオが貧しいものになっているということでしょう。

 「オーディオに凝るミュージシャンは少ない」とはよく言われていることで、むしろリスナーの方がスピーカーがどうの、アンプがどうのとやってきたようです。音楽を演奏しない人がレコードを演奏して、代償的な満足を得るということもあるのでしょう。でもそういったことをするのは、ごく一部の人に限られてきました。

 ご存じの通り、今はネットでダウンロードして携帯オーディオで聴く人が増えていて、CDショップがつぶれる時代です。配信されたファイルは、どの機材で聴いても同じようなもので、「演奏する」余地はないのです。イヤフォンによって音が違う、などということもあるでしょうが、それにしても変化の幅がありません。デジタル技術による音の均一化が、1980年代にCDが登場してから加速度的に進んで来たのです。

 インターネットからダウンロードしたり、CDから取り込んだ圧縮音源は、栄養を満たすために同じ料理を同じ食器で食べる、給食のような音です。給食が行き渡って、手料理を食べない人が増えるのは、どうもいただけません。食べる人の喜ぶ顔が見たくて美味しい料理を作るように、音楽を楽しむために手間をかけても良いように思うのですが。
posted by nori at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 音の考現学
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