年をとってくると姿勢を保つのが難しくなったり、身体が歪んできたりします。テレビを見ていると、たいていは整形外科の先生がこんな話をしてくれます。「筋力が衰えてくると、姿勢を保てなくなってきます。ですから背筋を鍛えたり、太らないように気をつけましょう」。私は本当にそうなのかな、と思うのです。
私は中学生のころ、とても姿勢が悪かったのを憶えています。ひどい猫背でした。学校の先生には「背中にものさしを入れるぞ!」と注意されるし、父親がまっ直ぐに腰を起こして食卓に向かっているのも不思議でした。でも当時はまがりなりにも運動部に入っていたし、体重だって今よりはずっと軽かったのです。筋力と体重のバンスで考えれば、今よりも圧倒的に有利なはずですが、本当にダメでした。これはどう理解すれば良いのでしょうか?
もう何年も前のことですが、老人保健施設に入っていた80歳近い女性に動作法で援助したことがあります。脳梗塞の後遺症のために、車椅子に乗っているか、ベッドで横になっている生活です。週に1回、時間にすれば15分ほどでしたが、それでも「身体を起こすのがうんと楽になる」と、たいそう喜ばれました。骨折が怖かったので、姿勢を起こす訓練のようなことはせずに、もっぱら力が抜ける感じを味わってもらうようにしていました。別に筋力をつけるようなことは、していないのですが……。
クルマにはパワー・ウェイト・レシオという数値があります。車体の重さを分子、エンジンの出力を分母として、その値が小さいほど軽々と良く走るということです。医学ではまさしく、こんな考え方をしているようです。もちろんそういうこともあるだろうけど、それだけですべてを説明できないのは、身体の使い方というダイナミックな要素が抜けているからでしょう。クルマのたとえで言えば、タイヤの向きがそろっていなかったら、どんなに強力なエンジンを積んでもまともに走れないはずです。
「身体の使い方」を瞬時にとらえて介入していくのが、臨床動作法の難しいところ、面白いところかもしれません。ところで中学生のころの私は、股関節を柔らかく使うことができなかったために、腰が後ろに引けていたようです。それで猫背にもなっていました。今でも股関節は弱点なのですが、当時よりは余計な緊張をせずに使えるようになっているので、姿勢を保つのはずいぶん楽です。介護予防のためにも、動作法がもっと活用されることを願っています。
2011年01月30日
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