2012年01月19日

思いこみ

岩手県臨床心理士会では「宮古支援チーム」を組織して、宮古市の仮設住宅の集会所に支援に出向いています。ここのところ月に2回のペースで「リラックスカフェ」と題して、リラクセーションとお茶のサービスをしています。そこに高齢の女性が、おいでになりました。震災でタンスや棚が倒れてきて、あちこちを打撲したそうです。とくに右腕は骨折してしまい、手術をしたとのこと。でも「術後の経過が良くない」のか、「後遺症」なのか分からないけれど、右腕が痛くて上げられません。医師からは「トシだからしょうがいない」と言われているそうです。

「では、右腕を上げてみてもらえますか」

「ほれ、こうやってもさ、上がらないのよ」

 たしかに腕は上がりません。相当に痛いのか、顔もしかめていらっしゃいます。でもこれでは上がらないはずで、この方は腕を上げるつもりで、肩を上げているのです。しかも肩から二の腕、肘にかけて、力が入りっぱなしのように見えました。これはいわゆる五十肩であって、身体の使い方を理にかなったものにすれば、改善されるかもしれないと思いました。慢性的に力が入っているのを弛めてから、肩を上げずに腕を上げるように援助してみました。あお向けになって、腕を真っ直ぐに上げていくだけの動作なのですが、余計な力は抜くように、必要な力を入れるように、動かしながら練習をしました。

「では、もうお手伝いはしませんので、ご自分で上げてみてください」

「おっ! 上がる、上がる。あー、上がるっ!」

と、今度は満面の笑みです。何度もバンザイをして、歩き回っていらっしゃいました。

けがをしたら、身体の使い方が変わるのは十分にあり得ることです。一部が不調になったら、それをどう補うのか、私たちは無意識のうちに調整をしているのでしょう。そして「痛い」とか「使えない」という身体イメージをいつまでも持ち続けると、非常時の身体の使い方が板についてしまうのかもしれません。そして「頑張る」スタイルが、悪循環を招くように思います。力んでしまうと動かないばかりか、痛みも生じてくるからです。

「後遺症でいつまでも痛い」とか「動かせなくなった」も、「頑張らないと動かない」も、あるいは「トシだからしょうがない」も、ちょっと困った思いこみです。その思いこみを外して、自分で動かせることを認識してもらうのは、心理学的な援助です。
posted by nori at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床動作法
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