2012年02月11日

タイマグラばあちゃん

岩手県の早池峰山麓に、タイマグラと呼ばれる地域があります。私も宮古への往復で何度か通り抜けたことがあるのですが、それはもうすごい山の中、ところどころ待避所がもうけてあるような一車線の山道が20kmも続くところにあります。ちなみにこの道、冬は封鎖されます。昭和の終わりになってやっとであっても、ここに電気や電話が引かれたこと自体、ちょっとにわかには信じられないような場所です。

開拓された集落も老夫婦の向田さんだけになり、自給自足のような生活をしていました。電気が通り、山荘を開くために若い奥畑さんが隣に引っ越してきて、結婚して長男が生まれました。90歳を越えていたお爺さんは木が枯れるように亡くなり、お婆さんも心臓を悪くして山を下って亡くなりました。奥畑さんたちは、お婆さんから習った味噌造りを受け継いでいきます。そんな様子を、淡々と描いたドキュメンタリー映画でした。

時には優しく、時には厳しい自然の中で起きることを受け入れて、百姓仕事に精を出す毎日。向田さん夫婦は察するに、世間一般で言うレジャーや贅沢、趣味などには無縁の生活だったと思います。でも、とても満たされていたのではないでしょうか。何でも自分の思い通りにしたい、あるいは思い通りにならないのはおかしい、そうした現代人の思い上がりがさまざまな不幸の始まりではないか、そんなことを感じました。

「われの心から山は絶えねえ。忘れることはできねえ、山は。夢にもみている、山は。どこも夢にみないが、タイマグラは夢にもみる」
posted by nori at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画に見るこころ
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