原題の「Habemus Papam」(アベムス・パパム)は、ラテン語で「教皇が決まった」という意味だとか。ちょっと古い日本人で知らない人はいない映画、オードリー・ヘップバーンの圧倒的人気にあやかった邦題です。しかし「ローマの休日」とは違って、出てくるのはジイさんの枢機卿ばっかりです。恋も痛快なハプニングもハッピーエンドもなく、生きることへの問いかけと乾いた笑い、そしてパロディが詰め込まれています。傑作だと思う人は思うけど、退屈だと思う人の方が多いのではないでしょうか。
ナンニ・モレッティ監督が自ら演じる精神分析医が、なかなか良い味を出していました。聖書に書いてあることは「うつ病そのもの」と枢機卿たちの前で演説をしたり、うつやら何やらで薬漬けになっている枢機卿たちにバレーボールをさせて元気にしたり。別れた元妻も精神分析医で、何でもかんでも乳児期の「愛情欠乏症候群」にしてしまうのも、ひとつの典型イメージ(現実は違うと思うけど)のパロディですね。
先頃に健康上の理由で退位された法王はかなり珍しい例とのことで、亡くなるまで世界中のカリスマであり続けるのが法王です。アメリカの大統領よりも、きついんじゃないでしょうか。やらなくちゃいけないのは、わかっている。でも自分には、とてもできそうもない。神様、お許しください……のまんまで結末を迎える、救いのない映画です。でも、私は面白いと思いました。
それにしても、マジメすぎるのも困りものです。マジメ過ぎて自分には無理だと考えて、前に進むことができない。そして周りの期待に応えない自分に、困ってしまっています。精神分析医が見抜いた通り、自己愛に浸りきっているのですが、すっかりふさぎ込んでいるので周りが何を言っても聞くはずもない。モレッティ監督は「もっとみんな元気に、いい加減に生きようよ」と言っているように感じます。
2013年04月10日
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