強盗殺人罪などに問われた被告に死刑を言い渡した3月の福島地裁郡山支部の裁判員裁判で、裁判員を務めた福島県の60代の女性が公判後、急性ストレス障害と診断されたことがわかった。
被告に襲われた被害者が119番通報した際の悲鳴を法廷で聞いたことなどが原因だとして、国に慰謝料を求めて法的措置をとることも検討している。
女性の弁護士によると、2009年の裁判員制度の開始以来、裁判員経験者が精神疾患と診断されたのは異例という。
上記は朝日新聞デジタルの記事です。実は、いつかこんなことが起きるのではないかと思っていました。アメリカの陪審員でも、起きていることです。
他のネット上の情報を見ると、その女性が裁判員用に用意されているカウンセリングを受けようとしたら、「年間5回まで無料だが、一番近いのは東京で、交通費などは自己負担」と言われて断念したそうです。
「年間5回まで無料」は、企業や自治体の健保組合などがカウンセリングのサービスを行なっている企業と契約するパターンです。しかも最低限、各県に一つは欲しいところなのに、福島県にはない。裁判員の制度では「心のケアをする」と謳っていますが、まことに不十分だと言わざるを得ません。
裁判員は民事事件には出番がなくて、死刑判決の可能性があるような凶悪事件を担当させられるのが、まずもって理解に苦しむ制度です。また守秘義務が裁判官よりも重く課せられていて、しかも何のための守秘なのか妥当性にも乏しい。この女性の場合も、「誰にも話すことができなくて苦しかった」と訴えておられます。制度上の欠陥が露呈したとも言えるでしょう。
もう一つ気になるのは、ハイリスクの人を裁判員から外す仕組みがないことです。心理的な外傷による障害は、外傷の蓄積によって発症のリスクが高くなるという研究があります。犯罪の被害者になった、いじめを受けた、災害や交通事故に遭った、虐待された……など、過去に外傷を負った人はストレス障害を発症する危険性があることを十分に説明して、もしそのような場合には拒否できる仕組みを作るべきでしょう。
2013年04月18日
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