2013年05月15日

雑草の痛み

春になっても肌寒かったのが、少しは陽気も出てきました。一雨降ると元気になるのが、雑草君たちです。今日は夕方にせっせと草むしりをしました。こっち、あっち、またこっちとむしりながら、思い出した話があります。

むかし東大に、佐治守夫先生という大先生がいらっしゃいました。ロジャーズの来談者中心療法を日本に普及させた、日本のカウンセリングの草分けと言うか、親分と言うか、ともかく偉い先生でした。私もお元気な時に、研修会で教えを受けたことがあります。その佐治先生が教え子に、

「いやしくもカウンセラーたる者、靴で踏まれた雑草の痛みを感じるようでなければならない」

とおっしゃったそうです。私がヒヨッコの頃に聞いたら、「ははっ、親分のおっしゃる通りでございます。至らぬことでございました」と恐れ入谷の鬼子母神だったことでしょう。でもその話を聞いたのはトサカが出かかった生意気ざかりで、「なに言ってんだか」と思っものでした。

「先生は草むしりで一本抜くごとに、身もだえなさるんですか。シラス干しは、大群が絶命する阿鼻叫喚を思い描きながらお食べになるんですか」

まあ、そんなことを言っていちゃもんをつけたくなる感じでした。向こうが親分なら、こっちはヤーさんです。しかし食べ頃を過ぎたヒネ鶏?となったいま、佐治先生は指導ではなくて啓発したくてでそう言ったのではないか、弟子があれこれ考えたりつっかかってきたりするのを期待していたのではないか、と思います。

これは私の解釈ですが、ストレートに指導をするなら「人の心には、とても思いもよらないこともあるんだよ。裏の裏まで思いをはせて、共感できるようでないと、だめなんだよ」と、そういう当たり前の話になってしまって、ちっとも弟子の心には残らないような気がします。本当のところはどうだか、わかりませんが……。
posted by nori at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | カウンセリング
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