何日か前の話ですが、テレビのニュースを流していたら、こんなことを言っていました。朝のバタバタした時間帯だったので、テレビどころではなかったのですが、「ん?……」とちょっと聞き耳を立ててしまいました。アメリカの科学雑誌に、こんな論文が掲載されたと言うのです。
マウスにサクランボのような臭いをかがせて、電気ショックを与えたら、恐怖反応(脱糞かな?)を示した。それをくり返していたら、サクランボのような臭いをかいだだけでも恐怖反応を示すようになった、と。ここまでは「パブロフの犬」で有名な条件反射ですね(マウスかわいそう……)。
ところがそのマウスの子どもが、その臭いをかいだだけで、同じ恐怖反応を示したと言うのです。もちろん、電気ショックは与えられていませんでした。
これは学生の時に習った「獲得形質は遺伝しない」、たとえば一生懸命に練習してピアノの達人になったとしても、その人の子どもにはピアノの技術が遺伝しないという原則に反しています。何でもマウスの精子に異変が生じて、それが子どもに受け継がれたそうです。
ニュースでは、PTSDなどのメカニズムの解明が進むようなことを言っていました。私が連想したのは、心理的な次元の現象(条件反射)が器質化するのであれば、脳器質も心理的な関わりによって変化をさせられるのではないか、ということです。
精神医学では長らく器質による内因性の精神疾患(統合失調症、うつ病など)と、心因性の疾患(いわゆる神経症)を分けてきましたが、近年は生物学的な精神医学が主流になって、神経症も身体的な基盤をもつと考えるようになっています。それはともすれば心理療法の否定につながるし、薬物療法オンリーの治療になりかねません。
「こころ」と「からだ」は別々のことではなくて、それぞれの次元でパラレルに変化が生じることもあるし、一方の変化がもう一方を変化させることもある。そんな風に考えると、つじつまが合うように思います。
2013年12月17日
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