今から30年も昔の話です。私が初めに勤めた病院は、単科の精神病院でした。閉鎖病棟が一つ、開放病棟が二つありましたが、窓には格子が入っていました。病棟には知的障害の人たちも、長いこと入院していました。本来は施設入所の対象になる人たちでしたが、30年前よりもさらに昔の時代には支援学校も施設もなかったので、知的障害が重かったり、てんかんや精神症状などの重複障害があると、精神病院に入院させられていたのです。私が就職した頃は、そうした人たちに退院してもらって施設に送っていました。
私は精神科のデイケアも担当していましたが、「精神分裂症」(今で言う統合失調症)のリハビリのために通ってくる人たちの中で、本当にその診断名で良いのか?(もちろん病名は医師がつけるものですが)と思わざるを得ない人たちが何人かいました。少なくとも過去に精神病様の反応は起こしているのですが、でもその症状が続いているわけでもないし、統合失調症の人たちが慢性化した状態にも思えませんでした。また
お母さんが「ごく小さい時からすごく育てにくい子で、その頃からぜんぜん変わっていない」という人もいました。
おそらく彼らは発達障碍(生まれつきの個性)であって、病気ではなかったのではないかと思います。今で言う自閉症スペクトラム障碍、あるいはアスペルガー症候群の人たちではなかったかと。私が退職してから何年かして、彼らのうち二人が悪性症候群(向精神薬の重い副作用)で亡くなったと聞きました。その病院にいた頃の私は、自閉症と言えば施設の中でないと適応できないような重度の障碍のある人しか想像できませんでした。
さすがに今となっては、発達障碍が精神科医にも理解されるようになっているので、統合失調症の診断でメジャー・トランキライザーを処方されたり、入院を勧められたり、などということは無くなっている……と信じたいです。
2014年05月11日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/96261626
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/96261626
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック