2016年11月04日

心理療法のパラダイム転換

10月28日から30日にかけて長野市で開催された、日本臨床動作学会と同学会が主催する研修会に参加しました。岩手ほどではないにしろ、肌寒い気候は東京などから来られた方々にはこたえたようです。どういうことか、私がホテルを探したときには長野市内のビジネスホテルはどこも空いておらず、かと言って深夜まで歩き回るのが分かっているのに宿坊を予約するわけにもいきません。結局、バックパッカー向けのゲストハウスに泊まりました。古い民家を造作して、木材で仕切ったカプセルホテルのような造りです。同室者はオランダから来た青年とかでしたが、みんなマナーが良くて快適でした。

さて今回は森田療法の第一人者の北西憲二先生と、動作法の成瀬吾策先生が対談をされました。対談に至る経緯が鶴光代先生から紹介されましたが、北西先生が成瀬先生の著作にほれ込んで「季刊 精神療法」(金剛出版)で書評をしてくださったそうです。もともと森田療法も臨床動作法も、メイド・イン・ジャパンの心理療法ということで共通しているわけですが、それ以上に共通点が数多くあり、目指しているところ、やっていることはほぼ同じではないかとの北西先生の見解が語られました。

ご存知の通り、森田療法は森田正馬(もりた・まさたけ 1874〜1938)によって創始された、主として神経症に用いられてきた心理療法です。「とらわれ」や「こだわり」から自由になって、「あるがまま」に暮らす知恵と言えるでしょう。「知識」ではなく「知恵」なのは、森田自身が死の恐怖に怯えてきて、いかに平常心を保つかをテーマにして実践を積み重ねたからです。「あるがまま」を観念的な理想像ではなくて、身体感覚に根ざすありようとして獲得してゆくのが森田療法の特質かと思います。いまは外来での治療も行われているようですが、もともとは入院治療が原則で、「絶対臥褥(がじょく)」と言ってただ寝るだけの時期や、作業をして過ごす時期などが設定されます。つまりクライエントに「体験」をしてもらうわけで、そこも臨床動作法と共通しています。もう一つのメイド・イン・ジャパンの心理療法として、内観療法があります。私は詳しくはないのですが、やはり内観という「体験」をクライエントにしてもらいます。

20世紀に心理療法のメインストリームとして君臨していた精神分析は、「私」を理解する作業に熱中してきました。認知行動療法は「私」を理解して(教えてもらって)行動する、でしょうか。ユング派の人たちは、「私」を癒したり成長させることを考えてきたように見えます。心理療法とはそういうことであって、当たり前の話なのですが、私にはそれが曲がり角に来ているように見えます。

いまの時代は、「私」が怪しくなっているのです。ひとつはコンピュータによるITで常に情報交換をしたり仮想現実に身を置くことで、言ってみれば自我機能が拡散していること。そして解離性の障害が増えており、また解離していることを「ふつう」に受け取る人もいることからも、「私」を中心に据えた心理学には限界があるように見えます。そして内省という作業に目が向かない人たちも、増えてきました。

心理療法は「私」という主語から「体験」という術語に、体験の「内容」から「様式」に、パラダイム転換が必要な時代ではないでしょうか。その中軸を担うのがメイド・イン・ジャパンの臨床動作法、森田療法、内観療法ではないかと……ちと話が大き過ぎますかね?
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2016年09月19日

人生が変わった!

スクールカウンセラーに行っている中学校で、職員室でとなりに席がある先生が昼休みに「猫背を直そう会」を開いてくれました。最初は、ひとりで腕を上げて背もたれで猫背をゆるめる方法を教えました。「楽になった人は手を挙げて」で挙げてくれた子が、ちらほらいました。先生に誘われたので遊びに行きたいのをガマンして来た子もいれば、面白半分でふざけている子もいます。昼休みは短いし、これではちょっとインパクトが弱いかなと思ったので、私が一人ずつ援助することにしました。椅子でいったん背中を反らしてからゆるめる課題を、ひとり30秒くらいずつで、どんどん体験してもらいました。

最初は男子がどんどん来て、「おー、なんだこれは……」と言ってくれる子もいました。中には中学生なのに、ものすごく猫背を堅くしている子もいて、びっくりしました。男子がひと通り済むと、こんどは女子が並びました。どっちかと言えば女子の方が真剣で、上手だったような気もします。終わってから「あ〜っ 人生が変わった!」と言い出す女子がいて、先生がとても興味深そうに話を聞いていました。「はて、30秒かそこいらで、人生が変わるとは?……」という感じでしょうか。

でも私にしてみれば、猫背を堅くしてうつむいているのと、背中を気持ちよく伸ばしてタテにしているのでは、人生がまるで違います。これを言葉で説明しても通じにくいけど、一度でも体験してみればよく分かります。まだ素直な中学生だと、こんな短時間でも、劇的な変化があるのかもしれませんね。身体の使い方に興味を持ってくれる人が増えると良いな、と思っています。
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2016年06月13日

滋賀での研修会

6月11日(土)から12日(日)にかけて行われた、臨床動作法の資格者研修会に行ってきました。会場のKKRホテルびわこは、京都から二駅の唐崎にあります。どうせホテルで缶詰めなんだし、どこでやろうと一緒じゃないかという話もあるのですが、研修室は琵琶湖を見渡すことができて、私なぞは外ばかり眺めてしまいそうでちと心配になったくらいです。

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古典落語の「近江八景」は、女郎からの手紙に近江八景が盛り込まれていますが、その中に「唐崎の夜の雨」が出てきます。近江八景は歌川広重の浮世絵で、「唐崎の夜雨」は唐崎神社の堂々たる老松が雨の夜に浮かび上がっています。

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朝の散歩に出たら、ホテルから歩いて10分ほどで着きました。左が広重の絵に描かれている松ですが、さすがに年月を経て衰えて、手厚く保護されています。樹齢500年にも、なるのでしょうね。

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さて肝心の研修ですが、今回は肩挙げの新しいやり方が初公開されました。また課題動作の中で出てくる、痛みへの対処も研修しました。これは腕挙げでやったのですが、前記の肩挙げと同じく、「手を触れない」方法でした。傍で見れば援助者はただ注文をつけているだけなので、手を使う援助よりも簡単そうに見えるかもしれませんが、実は難しいです。見ているだけで、自分の身体の中に相手の身体の感じを作らなくてはなりません。私にとっては肩挙げも、腕挙げも、初心者の頃に習った課題ですが、20年経っても同じことをああでもない、こうでもないと、動作法の奥深さを実感した研修会でした。
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2015年10月30日

臨床動作法は「ガラパゴス」?

 10月10日から12日まで、日本臨床動作学会に参加するために名古屋に行ってきました。シンポジウムのテーマは、「臨床動作法の基礎と工夫」。私は開業臨床心理士としてどんな工夫をしているのか、なみいる先達の前では恐れ多かったのですが、自分なりの工夫をお話しすることにしていました。フロアで出番を待っている間、私の前に発言された心療内科の医師の発表がインパクトがありました。ネットで検索をかけて英語の論文数をあたると、アレキサンダー・テクニーク、センサリー・アウェアネス、ブレインスポッティング、ローゼンメソッド、EMDR、マインドフルネス、ロルフィング、催眠、ヨーガなど、他のボディワークに比較すると臨床動作法の論文はまさに雀の涙で、これでは「ガラパゴス化」していくし、下手をすると他のボディワークに取り込まれて消滅していくのではないか、と言われました。

 厚生省が医療費の削減に躍起になっているなか、臨床動作法に人件費に見合うだけの診療報酬がつくためには、治療効果のエビデンス(証拠)を示していく必要があります。臨床動作法が世の中に定着して広まって行くには、組織的な研究でしっかりエビデンスを示すこと、英語の論文を大量に出していくことが重要であると。まあこれは、当たり前過ぎるくらいの正論でしょう。

 この発表への成瀬悟策先生のコメントが、また面白かったです。「ガラパゴスとは、またけっこうなお話をいただきました。それで考えていたんですが、いったい遅れているのはどっちなんだろう、と(もちろん「臨床動作法の方が進んでいる」で参加者たちは一致しています)。良いものをこれから世界に発信していくので、最高のものにしたいと考えています」と。

 ガラパゴス諸島で生物が特異な進化をしたのは絶海の孤島ゆえですが、臨床動作法は本来的に絶海の孤島なのだと思います。他の心理療法は言葉を仲立ちにしているので、本を読めば分かった気になる、という現象があります。ところが臨床動作法は、身体の動きと感じを仲立ちにしているので、いくら本を読んだとしても、実際に体験してみないとまるで分からないのです。体験しても分からなくて、何回も体験して見えてくることがあります。私は学会主催の研修会で成瀬先生のお話をそれなりに分かるようになるまで、何年もかかりました。

 「ガラパゴス=絶滅寸前」と思われがちですが、ガラパゴスならではの良さもあるのではないでしょうか。あまり知られていませんが、ガラパゴス諸島ではコーヒーが有機栽培されています。絶海の孤島ゆえ他の産地で問題になる病害や虫害がなく、無農薬でコーヒーが栽培できるというわけです。臨床動作法は「やってみないと分からない」ので、携わっている人たちの研修への熱意があるし、何よりも役に立つことを実践するという価値観が共有されています。どこかの学会のように? 言葉の空中戦ということはありません。もちろん臨床動作法が世界に広まっていくことは、願っています。
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2012年09月25日

地域に生かす臨床動作法

21日から23日まで、沖縄の琉球大学で臨床動作学会の学術大会と学会主催研修会がありました。
飛行機の都合で一日目の研究発表は後半しか参加できなかったのですが、二日目のシンポジウムは「地域に生かす臨床動作法」とのテーマで、とても興味をひかれるものでした。高齢者の健康法やリハビリとして、地域のつながりをつくる手立てとして、育児支援としてなど、さまざまな形で動作法が地域に貢献できる可能性が発表されていました。

荒柾文先生(JICA青年海外協力隊)が取り上げられていたのが、WHOが推奨している、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR:Community Based Rehabilitation)による展開でした。これは社会資源に乏しい地域で、どのように活動を展開したら良いのかということについて、有効な考え方だと思います。専門家が直接にクライアントに関わるのではなく、専門家が地域の人たちに関わり方を指導していって、地域の人たちがリハビリを行うというものです。「サービスの質が低下しても、ゼロよりは良い」との考え方は、言われてみれば当たり前のことですが、質の高いサービスの提供に腐心してきた専門家にとっては新鮮な発想かもしれません。

被災地の人たちへの支援にも、CBRは有効な方法だと考えます。動作法に限らず、さまざまな方法が専門家から地域の人たちに、そして地域の人たちどうしで使うことができるように、そんな展開がなされることを期待しています。
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2012年01月19日

思いこみ

岩手県臨床心理士会では「宮古支援チーム」を組織して、宮古市の仮設住宅の集会所に支援に出向いています。ここのところ月に2回のペースで「リラックスカフェ」と題して、リラクセーションとお茶のサービスをしています。そこに高齢の女性が、おいでになりました。震災でタンスや棚が倒れてきて、あちこちを打撲したそうです。とくに右腕は骨折してしまい、手術をしたとのこと。でも「術後の経過が良くない」のか、「後遺症」なのか分からないけれど、右腕が痛くて上げられません。医師からは「トシだからしょうがいない」と言われているそうです。

「では、右腕を上げてみてもらえますか」

「ほれ、こうやってもさ、上がらないのよ」

 たしかに腕は上がりません。相当に痛いのか、顔もしかめていらっしゃいます。でもこれでは上がらないはずで、この方は腕を上げるつもりで、肩を上げているのです。しかも肩から二の腕、肘にかけて、力が入りっぱなしのように見えました。これはいわゆる五十肩であって、身体の使い方を理にかなったものにすれば、改善されるかもしれないと思いました。慢性的に力が入っているのを弛めてから、肩を上げずに腕を上げるように援助してみました。あお向けになって、腕を真っ直ぐに上げていくだけの動作なのですが、余計な力は抜くように、必要な力を入れるように、動かしながら練習をしました。

「では、もうお手伝いはしませんので、ご自分で上げてみてください」

「おっ! 上がる、上がる。あー、上がるっ!」

と、今度は満面の笑みです。何度もバンザイをして、歩き回っていらっしゃいました。

けがをしたら、身体の使い方が変わるのは十分にあり得ることです。一部が不調になったら、それをどう補うのか、私たちは無意識のうちに調整をしているのでしょう。そして「痛い」とか「使えない」という身体イメージをいつまでも持ち続けると、非常時の身体の使い方が板についてしまうのかもしれません。そして「頑張る」スタイルが、悪循環を招くように思います。力んでしまうと動かないばかりか、痛みも生じてくるからです。

「後遺症でいつまでも痛い」とか「動かせなくなった」も、「頑張らないと動かない」も、あるいは「トシだからしょうがない」も、ちょっと困った思いこみです。その思いこみを外して、自分で動かせることを認識してもらうのは、心理学的な援助です。
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2011年06月30日

イップス

最近のことですが、とある高校にスクールカウンセラーに行きました。帰りしなに担当の先生に、「そう言えば、あの子はどうしましたか? 部活をしていて、イップスで手が動かないとか言っていた女の子ですけど」と聞いてみました。「あー、最後は試合に出たそうです。ありがとうございました」と言われました。

昨年の秋に、女の子が保健室の先生に勧められてやってきました。「イップスになって、部活ができなくなりました」と言います。「え、イップス? イップスってなに?」と聞き返したのですが、初めて聞く言葉でした。ご本人からも「本来はゴルフの言葉で……」と説明を聞いたのですが、Wikipedeaにはこう書かれています。

イップス (Yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のことである。本来はパットなどへの悪影響を表すゴルフ用語であるが、現在では他のスポーツでも使われるようになっている。

その部活でしているスポーツをしようとすると、手がしびれるのだそうです。しかも違うポジションの動きはできるけど、本来のポジションになると症状が出てくるとか。これは動作法で何とかなるのではないかと思い、肩周りのリラクセーションと、腕上げをしてみました。五十肩の人と同じように援助をしたら、保健室の先生に「何だかわからないけど、良くなっちゃった」と言ったそうです。その後にももう一回来て、やはり動作をしたのですが、それから半年ほど会っていませんでした。

その子は「病院に行ってみたけど、ちっとも良くならない」と言っていましたが、夏の大会でプレイできたのは、本当に良かったと思いました。あまり症例報告を聞いたことはありませんが、イップスは臨床動作法で有効な援助ができるのではないかと思います。
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2011年01月30日

姿勢は筋力と体重のバランス?

年をとってくると姿勢を保つのが難しくなったり、身体が歪んできたりします。テレビを見ていると、たいていは整形外科の先生がこんな話をしてくれます。「筋力が衰えてくると、姿勢を保てなくなってきます。ですから背筋を鍛えたり、太らないように気をつけましょう」。私は本当にそうなのかな、と思うのです。

私は中学生のころ、とても姿勢が悪かったのを憶えています。ひどい猫背でした。学校の先生には「背中にものさしを入れるぞ!」と注意されるし、父親がまっ直ぐに腰を起こして食卓に向かっているのも不思議でした。でも当時はまがりなりにも運動部に入っていたし、体重だって今よりはずっと軽かったのです。筋力と体重のバンスで考えれば、今よりも圧倒的に有利なはずですが、本当にダメでした。これはどう理解すれば良いのでしょうか?

もう何年も前のことですが、老人保健施設に入っていた80歳近い女性に動作法で援助したことがあります。脳梗塞の後遺症のために、車椅子に乗っているか、ベッドで横になっている生活です。週に1回、時間にすれば15分ほどでしたが、それでも「身体を起こすのがうんと楽になる」と、たいそう喜ばれました。骨折が怖かったので、姿勢を起こす訓練のようなことはせずに、もっぱら力が抜ける感じを味わってもらうようにしていました。別に筋力をつけるようなことは、していないのですが……。

クルマにはパワー・ウェイト・レシオという数値があります。車体の重さを分子、エンジンの出力を分母として、その値が小さいほど軽々と良く走るということです。医学ではまさしく、こんな考え方をしているようです。もちろんそういうこともあるだろうけど、それだけですべてを説明できないのは、身体の使い方というダイナミックな要素が抜けているからでしょう。クルマのたとえで言えば、タイヤの向きがそろっていなかったら、どんなに強力なエンジンを積んでもまともに走れないはずです。

「身体の使い方」を瞬時にとらえて介入していくのが、臨床動作法の難しいところ、面白いところかもしれません。ところで中学生のころの私は、股関節を柔らかく使うことができなかったために、腰が後ろに引けていたようです。それで猫背にもなっていました。今でも股関節は弱点なのですが、当時よりは余計な緊張をせずに使えるようになっているので、姿勢を保つのはずいぶん楽です。介護予防のためにも、動作法がもっと活用されることを願っています。
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2010年07月15日

歩く

 先週の土曜日から日曜日にかけて、臨床動作法の研修会がありました。その中で「歩く」ことも、取り上げられました。成瀬悟策先生いわく、「20歩や30歩くらいではボロが出てこない。100歩目くらいからボロが出てくる」とのことで、靴をはいてホテルの中庭でやりました。「脚をまげないで真っ直ぐ出して、かかとからつま先までの重心移動を味わいながら歩く」のは、意識すればするほど難しく、翌日は少々筋肉痛が出ました。

 「まげない」以前に、「真っ直ぐ」ができているかどうか。両足とも、外回りや内回りせずに真っ直ぐに出る人は案外少ないのかもしれません。そして足の裏が地面を踏む時に、内向きでも外向きでもなく、しっかり踏めているかどうか。女性でヒールのお皿から、かかとがずれてしまう人は、ここらへんからアヤシイことになっています。

 かく言う私も、右足の土踏まずにしっかり力が入らなくて、成瀬先生に直していただいたのでした。これは子どもの頃に内まただったのを自分で直したつもりだったのですが、足首を変にひねって使っていたのでした。「今頃になってそんなことができたって喜んでいるようじゃ、ダメ」と笑われてしまいましたが、成瀬先生のように身体の使い方を診ていけるようになるには、まだまだ修行が必要です。
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2010年02月06日

面白いほど滑らない

 今年は暖冬との予報でしたが、ここ数日は寒い日が続いています。ツルツルに凍った道は、歩くのも容易ではありません。私も何度か尻餅をついて、痛い思いをしたことがあります。東北では冬は転ぶのが怖いからと、家の中でじっとしているお年寄りもいらっしゃるようです。

 ところが「階段を降りる時に、上の段の足のかかとを浮かせないで、下の段の足をつま先からゆっくり着く」降り方ができるようになると、凍った道でも滑らないで歩けるのです。考えてみれば当たり前のことで、残る方の足が最後までしっかりついているので、もう片方の足を前に出しても滑らないのです。足首と膝と股関節を、柔軟に使えると、できるようになります。
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2009年12月07日

チャレンジ

 一昨日から昨日にかけて東京での研修会に参加してきました。今回は私にとって、チャレンジする課題の連続でした。一日目には「開脚して前屈、頭を床につける」という難題がありました。股関節がかたくてただの開脚だけでも苦手なのに、頭を床につけるなんて「絶対に無理」と思いました。講師の成瀬悟策先生は、「痛いのは抵抗しているのだから、抵抗を止めれば良いだけ」とおっしゃいます。始めてみたらグループのメンバーから「道のり遠いね、でも頑張れよ〜」的な励ましをいただきましたが、もう泣きの涙?でした。それが……援助してくださったN先生のおかげもあって、つきました! ついてみると、「あの痛みは何だったんだろう、何であんなに抵抗していたんだろう」と思ってしまうから、不思議です。

 さて二日目のハイライトは、「階段を降りる」でした。下の段に降ろした足でしっかり踏めず、膝を内側に屈げて、骨盤を外側に突きだして降りている人が、膝が痛くなったりするそうです。そうならないためには、降ろす足を指先からゆっくり降ろせる(ストンと落としてしまうのは、痛くなったりバランスを崩すから)こと、そして上に残す足はかかとを浮かせないでしっかりついていなくてはなりません。そうするには、残す側の足首と膝と股関節をゆるめて屈げなくてはなりません。もちろん両足の膝は、左右にぶれずに真っ直ぐに使えないとだめです。

 「なんだ、そんなこと」と思う人は、やってみるといかに難しいかが分かります。少なくとも私は大変でした。「もう足がブルブルして、わけが分からなくなった」と言う人もいました。会場のホテルの階段で練習して、これまたN先生のおかげもあって、まあ何とか課題通りの動きができるようになったと思うのですが……翌日の今日は筋肉痛です。
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2009年10月25日

鹿児島での学会

10月16日から18日にかけて鹿児島市で開かれた、日本臨床動作学会の学術大会と研修会に参加してきました。会場の中原別荘は繁華街の天文館のすぐ近くにありながら、天然温泉が引かれていて、なかなか良いところでありました。もっともこの学会はホテルで缶詰になって、どうかすると懇親会が終わってからも動作法のおさらいやら、新技の披露やらをしています。前泊か後泊をつけない限りは遊ぶこともなく、どこでやろうと同じなのです。

それはさておき。研修会は例年通り、成瀬悟策先生の講義から始まりました。先生のお話は年々整理されていって、分かりやすくなっているような気がします。1924年生まれの先生は本当に若々しくお元気で、あやかりたいものです。私は先生のお話を「他の心理療法の用語や考え方にとらわれていると、動作法の目的や過程を表現することができなくなる」と理解しました。成瀬先生の理論は「身体をコントロールできるようになれば、心もコントロールできるようになる」と言った心身二元論を超えて、「主体の心理学」に進化しているようです。

臨床動作法は学び始めてから12年、学会認定資格の「臨床動作士」を取得してから5年になります。理論も技法もどんどん変わって行くし、自分でも発見をしたり難しさにつきあたったりで、一見単純なようで実はとても奥深い世界です。
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2009年08月23日

臨床動作法との出会い

 もう12年前の話になってしまいます。私は13年間勤めた新潟県の精神病院を辞めて、岩手県の皮膚科の診療所で働き始めました。そこはアトピー性皮膚炎を中心に、皮膚病を心理的な側面からも治療していました。入院ベッドがあって、全国から患者さんたちが集まってきました。

 入院してくるのは青年期の人がほとんどで、生活をアトピーに支配され、学校や職場を辞めてくる人も少なくありませんでした。彼らに会って話を聴いてみると、症状や治療歴などの事実は細かく話してくれるのですが、心理療法にとって肝心な感情や連想の表現に乏しい人が多いことに気づきました。

 院長は臨床心理士の資格を取るほどで、箱庭療法をされていました。私も関心があったので、患者さんに箱庭を作ってもらうこともありました。ところがこちらも、砂箱の前で立ちつくしたまま時間が経ったり、ジオラマを作る人もいて、のびのびと象徴的な表現を楽しめる人は限られていました。

 さてこのような入院患者さんたちに、どんな援助ができでしょうか? 3〜4ヶ月の入院期間では、週に1回会ったとしても、10回くらいしか面接ができません。もちろん心理療法でアトピー性皮膚炎そのものを治すことはできませんが、対人緊張や不安を減らすことができれば、症状の改善が見込まれます。青年期のアトピーは、ストレスを「掻き癖」で発散するので悪化してしまうのです。またアトピーに振り回されているうちに、主体性を失ってしまう人が多いので、リラックスしてゆとりを持てるようになれば、主体性を取り戻せそうです。

 臨床動作法については、日本心理臨床学会の自主シンポジウムでどんなことをするのか、知識を得ていました。口腔外科で自己臭恐怖症の治療に用いた症例の発表でしたが、言葉を用いる心理療法だと相当に時間がかかりそうな人でも、驚くほど早く良くなっていました。「ここで使ってみたら、面白いかも」と思いました。まず何よりも、気持を話せない人や箱庭を作れない人はいても、身体を動かせない人はいないのです。
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2009年05月20日

心理療法としての発展

 1980年頃から、統合失調症の患者さんに動作訓練を用いる研究が行われました(蒲原・鶴)。見違えるように行動が自発的になったり、緊張に気づいてコントロールできるようになったとのことです。でも動作訓練で統合失調症が「治る」とか「軽くなる」と結論するのは早計でしょう。病気そのものを軽くしたのか、それとも療養生活で身についた受身的なかまえを変えることができたのか、それはわかりません(個人的には後者であろうと考えます)。いずれにしても、患者さんが生き生きと暮らせるようになれば、それで良いのです。

 その後は統合失調症だけではなく、不安障害(いわゆる神経症)や摂食障害など、さまざまな悩みを抱えている人たちに動作訓練が用いられるようになり、効果を上げていきました。

 さて「動作訓練」は肢体不自由の人の動作の改善を目的にしているので、心理療法の場合も同じ言葉で表現するのは適当ではありません。動作法による心理療法を動作療法と呼んでいた時期もあったようですが、現在は臨床動作法と呼ばれています。
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2009年05月17日

心理リハビリテイション

 動作訓練の効果を上げるために、集団で1週間の合宿をする試みが1967年から始まりました。これが動作訓練と集団療法、生活指導の三つを柱とした「心理リハビリテイション」となっていきます。また動作訓練自体も弛める課題(リラクセーション)から、「タテ系」と言われる坐位、膝立ち、立位、歩行と重力に対してバランスを保つ課題が中心になっていきました。

 訓練キャンプの対象は、初めのうちは脳性マヒをもった子どもたちに限られていました。しかし1976年に故大野清志先生が、自閉症の子どもたちに動作訓練が有効であるとの研究を発表されました。ご存じのように自閉症の人は対人コミュニケーションが難しかったり、未知の状況になるとパニックを起こしたりはしますが、動作の不自由を抱えているわけではありません。動作訓練の対象は脳性マヒから自閉症やダウン症、知的障害などに広がっていったことは、改善の目的が「動作」から、「行動」や「生活」まで広がっていったことを意味しています。

 動作訓練は養護学校の先生方を中心に、教育の中に取り入れられていきました。1976年から日本リハビリテイション心理学会が組織されており、トレーナーとスーパーバイザーの資格が認定されています。
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2009年05月13日

動作訓練の始り

 臨床動作法は、日本で生まれた心理療法です。まだ歴史が浅いことや、言葉を媒介にしないこともあってか、臨床心理学を学んでいる人の間でも、ずいぶん誤解されているようにも思います。そこで私が学んだことを、何回かに分けてお伝えしようと思います。

 ご存じのように、心理療法のほとんどは外国から導入されたものです。その例外とも言える森田療法は精神科医の森田正馬によって、内観療法は企業経営者の吉本伊信によって発案されたので、日本の心理学者によって始められたものとしては、唯一と言えるのではないでしょうか。創始者である九州大学名誉教授の成瀬悟策先生は、日本における催眠研究の第一人者でした。

 そもそもの始まりは動作訓練、つまりは動作が不自由な人への支援です。催眠の研究者が脳性マヒの人に催眠をかけたら「動くはずがない」腕が動いてしまったのだそうです(1964 小林茂)。脳性マヒは脳の神経が傷ついてしまったことによる障害なので、その傷を治す手だてがない以上、動作の不自由は改善できないと言うのが、当時の医学の常識でした。ところが催眠は、心理学的な次元の現象です。生理学的・神経学的な次元での改善はできなくても、心理学的な次元での働きかけで動作を改善できる可能性が出てきたわけです。

 試みていく中で、催眠はなかなか実用的な手だてにはなりにくいことが分かりました。そこで身体を弛める練習を通して、動作を改善しようとしました。脳性マヒの人たちは「力が入らない」のではなく、「余計な力が入ってしまう」ために、お目当ての動作ができなくなっているのです。これが動作訓練の始まりです。
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2009年03月01日

東北地区動作実践検討会

 一般の方には意味不明の集まりですが、2月28日から3月1日にかけて、北上市で開かれました。北は北海道から南は名古屋までになりましたが、東北地区を中心として動作法を実践している人たちが集まりました。
 「動作法?、何それ?」と思われる方に少しだけ説明をしておきますと、成瀬悟策先生によって創始された、身体の感覚を手がかりにして心身のコントロールを養う方法です。「何それ? 私猫背なの、肩こりひどいの、そういうのもなおるの?」と、三次会のスナックのお姉さんに言われて、お調子者の私は肩周りをゆるめる援助をしました。「え〜っ、すごい! 何これ? 軽〜い、肩がなくなったみたい!」ですと。やっぱりやってみた方が、早いですね。
 さて。いま動作法の世界は、肢体不自由の子どもへの援助を中心とした「心理リハビリテイション」と、心理療法である「臨床動作法」の二つの流れになっています。この二つは同じなのか違うのか、違うとしたらどう違うのか、そのへんを探ってみようと言う、関係者にとっては意義深い集まりでした。
 私もシンポジストとして発表の場を与えられたのですが、順番が最後でした。前の先生方が発表している間は、こんな規模の集まりになるとは想像もせず、「好きなようにしゃべってください」との企画者の言葉を真に受けて、能天気プレゼンを作ったのを後悔していました。でも「面白く聞きました」と言ってもらえたし(そりゃー面と向かってバカにはしないだろうけど)、まず良しとしますか。
 何より仲間と集まるのは、元気がもらえます。実習の時間もあって、背中を楽に反らせらるようになって(ここんとこ、疲れがたまっていたのかも)、身体も気分も楽になりました。
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