
10代の頃から音楽が好きで、周りの人たちの多くがフォークソングを愛好していたのに、ロック、とりわけプログレと呼ばれる分野の作品が好きでした。大学生になった頃にはパンクが流行り、とてもこれにはついて行けないと、フュージョンから入ってジャズを聴くようになりました。どっぷりとジャズに浸かること、40年です。その間、音楽を聴く道具としてオーディオにもこだわってきました。とは言え、ときおり買う雑誌はハイエンド製品で紙面が埋まった「Stereo Sound」や自作マニア向けの「無線と実験」ではなくて、音楽ファン向け?の「ステレオ」誌がせいぜいです。まあ、その「ステレオ」誌にも、価格のゼロがひとつふたつ違うんじゃないかと思うような代物が掲載されることがあって、オーディオ人口の減少と所得格差の拡大を感じざるを得ません。
ここ数年はジャズも聴くけれど、クラシック音楽も聴くようになっています。以前は譜面通りに演奏する音楽は退屈ではないかと思っていたのですが、トシを取ったのでしょうか。宗旨替えをしたわけでもなくて、楽しみの幅が広がった感じです。私の場合、いちばん最初にのめり込んだのはグレン・グールド(p)が弾くバッハの「ゴールドベルク協奏曲」でした。自由気まま?でのけぞるようなスピード感もあって、これはもうジャズではないかと思いました。
いまのコロナ禍での、私たちの心情に寄りそってくれるのが、バッハの音楽ではないかとも感じます。バッハが生きた時代は、疫病や死があちこちにありました。バッハ自身も最初の妻を亡くしているし、二人の妻の間にもうけた子どもたち20人(!)のうち、成人したのは9人でした。晩年はインチキ医者に乗せられて眼の手術をしたのですが、それがもとで亡くなっています。「この頃は葬式が少なくて、収入が減ってしまった」などと、こぼしてもいたようです。サバイバルしていたバッハから、勇気をもらいましょうか。