2014年04月30日

じんましん

じんましんを「蕁麻疹」と書ける人は、ちょっといないかもしれませんね。なぜか知りませんが、皮膚病というのは、難しい漢字が多いです。蕁麻とはイラクサのことで、これに触れるとかゆくなることから、蕁麻疹の名前がついたそうです。ウィキペディアを見たら、こんなニッチな情報が載っていました。

さて皮膚科で働いていた時に、このじんましんの患者さんにお会いしたことがあります。たしか50代の女性だったかと思いますが、かゆみがひどくて、血が出るまですねを掻きむしってしまうとのことでした。カウンセリングはご本人が希望されたわけではなく、皮膚科の医師(院長)から勧められたのでした。

ご本人にしてみればとにかくかゆいし、掻いてしまって、それで困っているわけです。「カウンセリングを受けましょう」と言われて、相談室に入ってこられたまでは良かったのですが、戸惑っておられました。私もちょっと困ってしまいました。はて、じんましんの人にカウンセリングとは? 「あそこの蕎麦屋に行けと言われたので来てみたのですが、ちっともお腹も減っていないし、酒を飲みたいわけでもないんです」と言われた、蕎麦屋のようなものかもしれません。

とにかくいまどんな暮らしをしていらっしゃるのか、そんなところから話を聴いたような記憶があります。あれこれ聴いていって、そしてためらいがちに話し始めたのが、息子さんのことでした。就職をしたら職場でパワハラに遭って、ずいぶんつらい思いをされていたそうです。頑張って続けてみたのですが、とても耐えられなくて、退職されたそうです。この方の怒りや悔しさ、息子さんを思う気持が見えて来ました。

1週間後にお会いしたら、「ウソみたいにかゆみがなくなって、掻かなくて良くなりました」とおっしゃいます。結局、2〜3回のカウンセリングで頑固なじんましんがきれいに良くなってしまいました。こんなことも、あるのですね。ストレス性のじんましんと思われる方は、カウンセリングを受けてみられるのも良いかもしれません。サバに当たった人は、ダメですよ。
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2012年03月23日

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症と書いて、「しょうせきのうほうしょう」と読みます。皮膚科の病名には、なぜか難しい漢字のものが多いです。酒皶(しゅさ)など、私が皮膚科で働いていた時には、パソコンに入っていなかったと思います。ちょっと調べたら、この「皶」はJISの第3水準なんですね。昔は第2水準までしかなかったのが、第3水準までできたようです。

さて掌蹠膿疱症は、手のひらと足の裏に無数の水ぶくれができて、なかなか治りにくい病気です。原因も不明です。患者の8割が喫煙者と言われていますが、禁煙すれば治るというわけでもないらしいです。ビオチンというビタミンの一種の内服が有効ですが、でも特効薬的に治るというわけでもありません。症状がひどくなれば仕事にも差し支えるし、かゆみもあるので辛いと思います。私が勤めていたクリニックでも、ビオチンセットの他にもぬり薬や紫外線療法、漢方薬など、さまざまな治療法を試しながら院長も患者さんも苦労していたようです。

さて「原因が不明」で「治りにくい」のは、何も掌蹠膿疱症だけに限ったことではなくて、皮膚病にはありふれた現象です。ストレスが引き金になって皮膚病になり、その皮膚病がまたストレスになって……という悪循環に陥ることもあります。

この前は手を包帯でぐるぐる巻きにした方に、お会いしました。「職場を異動になるまでは何ともなかったのに、異動になったら……」軽いうつ状態になられたようです。その後にブツブツが沢山出てきて、皮膚科に行ったら掌蹠膿疱症と診断されたそうです。他に生活上の変化はなかったので、異動に伴うストレスが発症の引き金になったと考えるのが自然です。ただストレスがそこまで悪さをするとは、あまり考えが及ばないのが普通なのかも知れません。
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2012年01月30日

心療皮膚科の可能性

私たちは「皮膚」と「心」のつながりについて、あまり意識をせずに生活をしています。皮膚は表面ですぐに触れることができますが、心は内面で見ることも触れることもできません。どちらかと言えば、対極にあるような感じがします。でもストレスが重なってくると化粧がのらなくなったり、湿疹がひどくなったり、円形脱毛症が始まったりします。帯状疱疹は常在のヘルペスウィルスですが、ストレスで症状が始まります。

皮膚病にかかると、私たちはストレスを感じます。皮膚病は命に関わるものは少ないのですが、かゆみを伴うものが多く、慢性に経過します。かゆみは痛みよりは軽く扱われがちですが、しかし猛烈なかゆみに襲われるのは、居ても立ってもいられないほど辛いものです。また顔など人目に触れる部分にできてしまうと、気になってしまいます。あるいは「うつる病気かもしれない」と、白い目で見られることもあるでしょう。しかし周りの人は「本物の病気ではない」ようにとらえがちで、こうした皮膚病の辛さにはあまり共感してくれません。

皮膚病にはストレスから症状が出て、症状がストレスになるという、悪循環の側面があります。このような病態には心理面からアプローチすることで、皮膚の症状を軽くできる余地は十分にあると言えるでしょう。まだまだ日本では主流の考え方ではありませんが、私が勤務した星の丘クリニックは、いち早く実践していたと言えます。
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2010年11月23日

岡部俊一先生を偲ぶ

 私は1997年の4月から2002年の3月まで、岩手県の石鳥谷町にあった「医療法人中庸会 星の丘クリニック」に勤務していました。皮膚科のクリニックで常勤で働いている臨床心理士は、おそらくは全国でも私ひとりだったと思います。院長の岡部俊一先生は皮膚科医で、漢方に精通していらっしゃいました。またご自分でも臨床心理士の資格を取られるほど、臨床心理学的なアプローチにも関心を持っておられました。

 岡部先生は秋田県の病院に勤務されていましたが、アトピー性皮膚炎の患者さんたちが人目を気にして入浴しているのを見て、専門的な治療施設を作ろうと思い立ったとのことでした。クリニックには入院施設があって、温泉がひかれていました。肌がつるつるになる、とろんとしたお湯でした。患者さんたちは漢方の煎じ薬を飲み、野菜中心の玄米食を食べて、運動療法もしていました。治療には心理療法も積極的に取り入れられていたので、私も非常に忙しい日々を過ごしていました。

 「心療内科」になぞらえて言えば、星の丘クリニックは「心療皮膚科」でした。日本では何十年も早過ぎた試みだったと思いますし、理想ではあっても実践するとなると現実の壁が立ちはだかりました。私は東京大学に心療内科を創設された石川中(いしかわ ひとし)教授のお仕事を、少しだけお手伝いしていた時期がありました。石川先生もやはり早世されていて、先覚者のご苦労を思います。

 岡部俊一先生の命日は、11月23日です。祝日ということもあってほぼ毎年、お墓参りに行くことができています。今日も墓前で花を手向けてきました。もう亡くなってから9年も経つとは、本当に月日の経つのは速いものだと思います。先生の遺徳を偲びつつ、星の丘クリニックでの思い出なども少しずつ書いていきたいと思います。
posted by nori at 21:25| Comment(6) | TrackBack(0) | 心療皮膚科