2022年06月09日

鯨山

岩手県の釜石市からは北上すると大槌町、山田町、そして宮古市と陸中海岸が続きます。前から登りたいと思っていた鯨山(くじらやま)は、大槌町と山田町の境目になります。登山口の「岩手県立陸中海岸青少年の家」に車を置かせてもらったのですが、庭の手入れをしていた女性から親切に教えていただきました。日曜日でしたが宿直の方がいらして、中で登山マップももらえるし、トイレも使わせてもらえるとのこと。

kujirayama.jpg

手描きが良い感じのマップ。クリックすると拡大表示します。

問題は11時頃になっていたのに、車が一台も停まっていなかったこと。大槌に住んでいる人からはよく「熊が出た」と聞いていたので、「怖いから止めようか」……とチキンな気分にとらわれました。それでも車で2時間かけて来たことだし、入山記録を見ると平日に一人で登っている人もけっこういるようだし、青少年の家の方は熊がどうとか言わなかったし、早朝でもないし、食べ物のない松林だから熊もいないだろう……と、自分に都合の良い理屈をつなぎ合わせて登ることにしました。

20220605_112741.jpg

整備されているのですが、何か出て来そうな?登山道。クマ鈴はつけていますが、ときどき奇声を上げて歩きました。

20220605_114333.jpg

振り返ると海が見えます。だんだん下に見えるということは、それだけ登ったということ。

20220605_130501.jpg

頂上からは絶景を楽しめました。

海沿いの山にありがちなことですが、急峻なアップダウンでけっこうきつかったです。1時間半で楽勝……と踏んでいたのですが、最後は鎖場が続いてヒイコラ言いながらプラス10分で登りました。下山したら、「マムシに注意」の立て札を発見。そうなんですよね、熊よりも怖いのはハチとかマムシだったりするのでした。
posted by nori at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 岩手の絵日記

2022年05月18日

残雪の八幡平

八幡平のアスピーデラインは、5月の連休あたりに開通します。雪の回廊を車で通って山頂まで行けるのですから便利と言えば便利です。自分も利用しているので文句を言うつもりは毛頭ないけれど、昔の人がふもとから歩いて上がった感動を味わうことはできないのですね。駐車場から頂上に至る道は舗装されていて、観光客が気軽にハイキングを楽しむことができます。

5月11日に、平日だから空いているだろうと思って出かけてみました。ガマ沼は雪解けの季節に「ドラゴンアイ」になることで有名で、5月の下旬から6月の上旬の見ごろになると、ワンサカと人が訪れます。

gamanuma.jpg

これは、まだ早いということでしょうね。大沼の方は、こんな感じで絶景になっています。

oonuma.jpg

雪原にはピンクのリボンがついた竹竿が刺さっていて、夏場であれば木道が敷かれた遊歩コースをぐるっとめぐることができます。

setsugenn.jpg

駐車場までの道を下っていたら、夏服にサンダルばきで荷物ナシのお兄さんが雪の上を苦労して登ってきます。コンクリートの舗装路でも日陰だと雪が残っているし、雪解け水がざんざん流れているところもあるのです。目が合うとお互いに笑みがこぼれました。

「やるもんだねえ!」

「いやあ、どういうとこか、ぜんぜん調べんときたもんで……」

関西のイントネーションでした。彼は無事に家にたどりついたのかしら。しっかりした感じの女性が同行していたので、大丈夫だったでしょう。駐車場に戻ったら、隣のクルマのお姉さんも戻ってきていました。彼女は大開脚ストレッチをして、エナジードリンクで気合を入れていたのです。

「上まで行って来たの?」

「あそこ(見返り峠の雪壁)登って、滑って降りるんです。お尻にゴミ袋を敷いて。めっちゃ楽しいですよ、毎年恒例なんです」

そういう楽しみ方があるとは知らなんだ。そう言えば岩手山からビニール風呂敷で降りて来たっていうお婆さんがいたけど、ホントかなあ。
posted by nori at 08:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 岩手の絵日記

2022年04月17日

プーチンのウクライナ侵攻

戦争ほど、悲惨なものはありません。

ロシアのウクライナ侵攻は、NATOの東方拡大を口実にしていますが、そうではないでしょう。いみじくもプーチン自身が言っていたように、ロシアは核兵器を大量に所有しています。ウクライナがNATOに加盟したとしても、ロシアがNATOから直接攻撃を受けるリスクは限りなくゼロに近い。

プーチン大統領は東からじわじわと自由主義の空気が広がってくるのを、恐れていたのではないかと思います。自由主義では「強い人」が王様になるので、そのときに「強い人」が交代で王様をしていれば良いのです。金権政治とか、ツィッターで「強さ」を獲得したアメリカのトランプ前大統領とか、それなりに嫌らしさは満載ですが、それでも政権交代する健全さはあります。

でも共産主義は「正しい人」が王様になるので、その「正しさ」を盤石にしないと政権が保ちません。だから「正しくない人」は、強制収容所に行かされるか粛清されます。結果的に、「正しい人」の長期独裁政権になります。それでも反対者を警察で取り締まって、常にビクついていなくてはなりません。ウクライナの大統領はアソコでピアノを弾く芸人だったそうで、人気者が大統領になるような世の中は断じて許せないでしょう。

プーチンが戦争を始めたは、第一には自身の政権を維持するためでしょう。その他に政治的信条なのか郷愁なのか分かりませんが、ソ連大国主義への回帰があるのかもしれません。独裁者を長いことしていたせいか、人を信じないし人の話も聴けない。「正確な情報を伝達しなかった」ことに立腹して、150人の官僚を追放したそうですが、「どうしてみんな、正直に話してくれなかったんだろう」と考えることもできなくなっています。こうなったのはプーチンに依存して、長期政権を容認してきたロシアの人々の責任もあると思います。

インターネットで即時に大量伝達できる時代には、民衆の感情が「強い人」を作っていきます。都合の悪いことは隠したり、武力で言うことを聞かせるのは旧時代の手法です。それに独裁政治は支配する者もされる者も、幸福にはしないでしょう。地球規模の問題は、コロナだけではありません。資源の枯渇と環境汚染に立ち向かい、人類を持続可能なものにしていかなくてはなりません。そのために、ともに手を取り合っていく時代を迎えたいものです。

そのためには、まず私たちも政治に関心をもって、具体的な活動をしてゆくことが必要だと思います。「どうぞ批判してください。それでもっと良いものにしていきましょう」というのが民主主義であって、力で批判を封じ込めようとする政権も、批判のための批判に堕している野党も、両方とも情けない。選挙では「よろしくお願いします」と名前を連呼するだけで、判断材料がありません。不満や要望があっても、黙っているだけの人々。そう考えると私も偉そうなことは言えないのですが、政治への無関心が独裁を生み、独裁が戦争を引き起こすのだと思います。
posted by nori at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | よしなしごと

2022年04月11日

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

主人公の肇(中井貴一)は大会社の企画室室長で、役員への道も確実になってきていました。仕事に追われて家族のことは二の次、三の次、仕事のことしか目に入って入っておらず、いつもイライラしています。そんなときに、自分のために工場を閉鎖するのに尽力してくれた親友が交通事故で亡くなり、島根で一人暮らししていた母親が病気で倒れます。子どものころから「バタ電」の運転士になりたかったーーそんな夢を思い出して、一念発起、電車の運転士になって地元で生活する道を選びました。

railways.jpg

表のストーリーとしては、「オレ、何をやってるんだろう」から「夢の実現」をなしとげた、そういう話です。中年期の危機と言ってもよいかもしれません。でもそれはあくまでも「表」で、「裏」が透けて見えてくるのが、この映画の魅力ではないかと思います。

その「裏」とは、中年を過ぎて感じるようになる、加害者意識でしょうか。仕事にかまけて、娘や妻、母親に淋しい思いをさせてきました。機嫌の悪いのをまき散らしていたし。会社の指示とは言え、工場をたたんでリストラを断行しました。仕方のないことだったかもしれませんが、物づくりにかけてきた社員たちへの共感はありませんでした。そして親友が店を予約してくれていたのに、東京にトンボ返りして、飲みに行きませんでした。もし誘いを断らなかったらゆっくり話もできたし、もしかしたら事故にも遭わなくて済んだのかもしれない。

そんな加害者意識、そして贖罪の気持ちが生まれていても、不思議ではないと思うような展開でした。同期で入社した運転士、宮田(三浦貴大)に「エリート」という言葉を使われたとき、肇は「オレはエリートなんかじゃない。自分のことしか考えない人間が、エリートのわけがない」と返していましたが、肇はエリートの意味を分かっていたはずなのに、いつの間にかずれていたことに、気づいたのでしょう。乗客にも宮田にも、家族にも優しく接するようになっていました。大会社の重役候補のときはエリートではなかったけど、運転士になってからエリートになった、そんな成長の物語だと感じました。
posted by nori at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画に見るこころ

2022年03月17日

3月16日 深夜の地震

昨夜も遅くなって、もう寝なくては……と思った頃に、地震がありました。たいしたことがなくて良かった……と安堵したらすぐに激しい揺れを感じて、携帯電話の警告音が響きました。家のが基礎から揺れているという感じで、本当に怖い。物がいくつか落ちていましたが、そんなことを気にしている余裕はありません。この調子でどんどん揺れがエスカレートしていって、そのうちに家ごと壊れて下敷きになるのではないか……そんな恐怖に襲われました。

東日本大震災のときは、鉄筋コンクリートの高校にいたので、揺れている間の恐怖感はそれほどでもありませんでした。長く続いたので、その不気味さはありましたが……。今回は木造家屋の自宅だったので、とても怖く感じました。

揺れが収まってからテレビをつけて、状況確認。家族の安否確認ができて、ほっと一安心。それでも眠くなりません。1時を過ぎてから、床に就きました。東日本のときのトラウマとかぶったこともあって、過覚醒状態になっていたのですね。夜遅くに眠りについたのに、今朝は早くから眼が覚めてしまいました。

今回の地震で被害に遭われた方々に、こころよりお見舞い申し上げます。自然災害が続いているだけではなく、コロナ禍、ウクライナでの戦争、そして地震、そして子どもへの虐待や殺人事件など、こころの安全が脅かされています。平和と安全こそが尊いものであることを、あらためて感じます。
posted by nori at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 東日本大震災

2022年02月11日

「10代の家出」に思うこと

NHKの番組を見ていたら、10代の人たちの家出が増えていると報道されていました。ある日突然、子どもが家から居なくなってしまう。携帯に電話をしても、つながらない。小学生だと誘拐された可能性が高いので、警察はすぐに捜査をしてくれるそうですが、中高生で緊急性が低いと判断された場合は、すぐに捜査には至らないようです。困り果てた親たちが、私立探偵事務所に相談をしたり、調査を依頼するとのことでした。SNSの裏アカウントにしか行動の手がかりを残していない子が多くて、なかなか保護には至らないことがあるそうです。10代の子を利用するために、SNSにクモの巣を張りめぐらしている大人もいて、詐欺の受け子に使ったり性的な暴行に及ぶ例も跡を絶たないらしいです。

コロナ禍で経済的に行き詰ったり、将来に不安を抱えている親が増えていて、家の中でもギスギスした雰囲気になりやすいのだとか。子育てにお金がかかる世代の人たちや、住宅ローンなどの借金をを抱えて人たちにとっては、本当に大変なご時勢だと思います。必死に働いて節約もしているのに、夜じゅう電気をつけてゲームに熱中して学校に行かない子どもがいたら……イライラの矛先が子どもに向かうことは容易に想像がつきます。実際にそのような事例も紹介されていました。

そんなときの親は「自分だけがつらい思いをしている」と、被害的な感情にとらわれているのだと思います。そうなる前に、「わが家の経済状況」を正確に子どもに伝えてみるのはどうなのでしょうか。借金、資産、収入、支出……毎月いくらの収入があって、何にいくら使っているのか。「子どもに余計な心配をさせるのは良くない」ことなのでしょうか。あるだけのお金で、それでも楽しく暮らしていくにはどうしたら良いのか、親子で話をしていくのは良いことではないかと思います。

番組で支援者の方が、「地域で何気ない会話ができていれば、追い詰められる人も減るのではないだろうか。みんなで話をするようにしていこう」とおっしゃっていました。それはコロナ禍だけに留まらず、少子高齢化、リーマンショックや非正規雇用の拡大、東日本大震災など、日本社会への揺さぶりに対して有効な手立てだと考えます。高度成長期に日本人は「会社丸抱え」の人生設計しか持たず、「経済的に価値がなくて面倒くさいだけ」のコミュニティを切り捨てて来ました。宗教はもともと貧弱だったし、自然も破壊が進んでしまったし、日用品の美は100均化する。政治はどの候補者も、同じようなお題目を並べるだけです。経済の凋落で心を支えを失くして、さらに経済も悪くなる……という悪循環だったのかもしれません。コトはそんなに単純じゃないよ、と言われるかもしれませんが、どうなんでしょう。
posted by nori at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | メンタルヘルス